研究課題/領域番号 |
18K08833
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
山本 直樹 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (90393157)
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研究分担者 |
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 麻酔薬 / 術後認知機能障害 |
研究実績の概要 |
1.今年度は、アジア系人種の特徴を有する2型糖尿病(DM)モデルのTSOD(Tsumura Suzuki Obese Diabetes)マウスに吸入麻酔薬を使用し、その後の脳内耐糖能異常とPOCDの因果関係を解明することを目的に研究を開始した。2型DMモデルのTSODマウスにおいて、脳内耐糖能異常を確認するためにインスリンよる細胞内シグナル伝達系の活性化について検討した。その結果、加齢に伴い脳全体のインスリンシグナル伝達系の一つが低下していることを見出した。さらに、新規物体認識試験やY字迷路試験を用いて、吸入麻酔薬投与後の認知機能低下を評価している。 2.脳内の細胞内シグナル伝達系で重要な役割を果たしているprotein kinase AとCのシグナルを活性化することによって、神経膠細胞の一つであるアストロサイト(初代培養)に発現しているアミロイドβ蛋白(Aβ)の分解酵素であるネプリライシンおよびインスリン分解酵素の発現を調節していることを見出した。また、この発現調節によってアストロサイトによるAβの分解も調節されることを明らかにした。現在、学術論文投稿中である。 3.初代培養神経細胞およびアストロサイトに麻酔薬を投与した際の細胞内シグナル伝達系の活性化やAβの産生系および分解系に関わる酵素の発現変化について検討を開始している。 4.脳炎がその後の認知機能に影響を与えることから、脳炎を模倣する薬剤用いて初代培養アストロサイトの細胞内シグナル伝達系の活性化に検討を行った。特にインスリンシグナル伝達系に関わるタンパクの活性化が誘導されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の当初の研究実施計画にあった初代培養神経細胞およびアストロサイトによる検討は、順調に遂行することができている。また、本研究計画を発展させるために学会に参加し情報収集することで、当初の研究計画には無かった研究事項も加えて遂行することができている。 しかし、所属機関変更およびそれに伴う実験動物の入手に時間を取られたことから、上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
1.行動試験:新規物体認識試験やY字迷路試験を用いて、吸入麻酔薬投与後の認知機能低下を評価する。 2.生化学的解析:①引き続きウエスタンブロット法にて、インスリン受容体基質(IRS)-1の特定部位のリン酸化は、インスリン抵抗性(耐糖異常)の指標のひとつとして考えられていることから、インスリンにより応答する蛋白(IRS-1などのシグナル伝達系蛋白のリン酸化など)の発現および活性化、また記憶に関与するシナプスに発現する蛋白の発現変化についても調べる。②ELISA法:脳内のインスリンおよび脳内グルコース濃度への影響について調べる。 3.免疫組織学的解析:上記で検討した蛋白について、脳内(特に、記憶に関係する海馬)の部位別における発現変化を調べる。 4.初代培養神経細胞およびアストロサイトを用いて、認知機能改善効果があるドネペジルやインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン(脳内移行性が高いインスリン抵抗性改善薬)およびメトホルミン(血液脳関門機能強化作用)による細胞内シグナル伝達系およびAβの産生系および分解系に関わる酵素の発現変化について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度の研究実施計画が、おおむね順調に行うことができたこと。また、当初予定していた糖尿病モデルマウスのによる検討が、本研究代表者が所属変更となり、 本研究の移動等に少し時間を取られた。以上のことより、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 1. 本年度に引き続き、ウエスタンブロット法にて、インスリン受容体基質(IRS)-1の特定部位のリン酸化は、インスリン抵抗性(耐糖異常)の指標のひとつとして考えられていることから、インスリンにより応答する蛋白(IRS-1などのシグナル伝達系蛋白のリン酸化など)の発現および活性化、また記憶に関与するシナプスに発現する蛋白の発現変化についても調べる。また、ELISA法および免疫組織学的解析などによって、上記で検討した蛋白や脳内グルコース濃度について、脳内(特に、記憶に関係する海馬)の部位別における発現変化を調べる。 2. 初代培養神経細胞およびアストロサイトを用いて、認知機能改善効果があるドネペジルやインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾン(脳内移行性が高いインスリン抵抗性改善薬)およびメトホルミン(血液脳関門機能強化作用)による細胞内シグナル伝達系およびAβの産生系および分解系に関わる酵素の発現変化について検討する。
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