研究実績の概要 |
本研究では、疼痛モデルマウスを用いて疼痛制御機構における脳内の脂肪酸関連因子の関与について検討を行った。脳内の脂肪酸調節因子として、脂肪酸をリン脂質から切り出す酵素の calcium-independent phospholipase A2(iPLA2),cytosolic PLA2 (cPLA2) や脳内における脂肪酸の輸送、代謝、情報伝達に関与する fatty acid binding protein 3,5,7 (FABP3,5,7) を用いた。 術後痛モデルマウスでは、機械的刺激に対して過敏反応を示した術後2日目の視床下部領域において、コントロール群と比較して、iPLA2 mRNA, や FABP3 mRNA 発現は有意に増加した。しかしながら、FABP7 mRNA 発現は、上記と同条件下の術後痛モデルマウスで有意に低下した。これらの変動は、過敏反応が減弱する 4 日目において、iPLA2 mRNA は 2 日目のそれに比較して低下し、FABP3 mRNA や FABP7 mRNAはコントロール群レベルまで回復した。なお、cPLA2 mRNA や FABP5 mRNA は、術後痛モデルマウスにおいて何らの変化も示さなかった。さらに、CFA 投与 1 日後の痛覚過敏を示したマウスの視床下部領域で iPLA2 mRNA や FABP3 mRNA はコントロール群に比較して、有意に増加した。 以上、疼痛モデルマウスの視床下部領域において、疼痛シグナルに応答して iPLA2 mRNA や FABP3, 7 mRNA の発現が変動したことから、疼痛時の脳内脂肪酸の作用発現においてこれらの因子が関与することが示唆されたる。
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