研究課題/領域番号 |
18K08839
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
鬼塚 信 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (20264393)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 局所麻酔薬 / DNAメチル化 / DNA脱メチル化 / 癌抑制遺伝子 / p53 / MSP法 / リアルタイムPCR法 |
研究実績の概要 |
局所麻酔薬の DNA脱メチル化による癌細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導機序を検証した。 方法: 局所麻酔薬の DNAメチル化への影響を検証すべく、局所麻酔薬に48時間暴露したHela細胞から DNAを抽出し、脱メチル化された DNAを認識し切断するメチル化感受性制限酵素 HAPⅡで酵素処理した後、リアルタイム PCR法で解析した。さらに、バイサルファイト処理後、メチル化特異的リアルタイム PCR法( MSP法)で解析した。 結果: HAPⅡを用いて酵素反応を行った結果局所麻酔薬により脱メチル化された DNAが増加した。局所麻酔薬により癌抑制遺伝子 p53の mRNAの発現が増加した(ΔΔ CT値:リドカイン -2.63+-0.99、ブピバカイン -1.17+-0.9 プロカイン -0.4+-1.5 at 100 M)。メチル化感受性制限酵素処理後、定量的リアルタイム PCR法で解析したところ、 p53が脱メチル化されていた(ΔΔ CT値:リドカイン 12+-2.5、ブピバカイン 0.7+-1.4 プロカイン 1.4+-0.7 at 100 M)。MSP法を用いた試験管内の実験系で DNAメチル化酵素( CpG Methyltransferase)による DNAメチル化を局所麻酔薬は抑制した(ΔΔ CT値:リドカイン 4.1+-0.95、ブピバカイン 1.17+-0.9 プロカイン 0.4+-1.5 Deoxyctidin 1.8+-1.2 at 100 M)。 結果:リドカインなどの局所麻酔薬は、 DNAメチル化酵素を直接的に阻害することで DNAを脱メチル化する機序により癌抑制遺伝子 p53の発現を増加することで癌細胞増殖抑制およびアポトーシスを誘導しうる可能性が示唆された。これらの成果は、日本麻酔科学会第65回学術集会にて、研究代表者(鬼塚 信)により報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、上記したごとく、リドカインなどの局所麻酔薬は、 DNAメチル化酵素を直接的に阻害することで DNAを脱メチル化する機序により癌抑制遺伝子 p53の発現を増加することで癌細胞増殖抑制およびアポトーシスを誘導しうる可能性が示唆されるという、研究結果が得られた。これらの成果は、日本麻酔科学会第65回学術集会にて、研究代表者(鬼塚 信)により報告された。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より解析能力の高いリアルタイム PCR装置を導入し、DNAメチル化の状態を定量的リアルタイム PCR法を用いて網羅的に解析予定である。そこで、現在のリアルタイムPCR装置が48wellと、解析能力が低いので、より解析能力の高いリアルタイムPCR装置(96well)を本科研費を用いて、導入予定である。 今後は、DNAメチル化の状態を癌遺伝子、癌抑抑制遺伝子とともに、PD1、PDL1等の腫瘍免疫関連遺伝子においても解析予定である。さらに、緩和医療においても多用される医療用麻薬のDNAメチル化への影響も検討する予定である。これらの研究結果を医学論文として投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAメチル化の解析には、同一試料から、複数のターゲット遺伝子のメチル化の状態を解析することが必要で、その為には、well数の多いリアルタイムPCR装置が必要不可欠である。今年度は、96wellある解析能力の高いリアルタイムPCR装置を導入し、より多くのターゲット遺伝子のメチル化の状態を解析予定であったが、機器が高額なため、今年度の予算では購入できなかった。そこで、現在所有している48wellの機器で、可能な限り代用したが、一度に解析できる遺伝子数が少なく、抵効率である。そこで、今年度の研究費を全部繰り越し、次年度に96wellある解析能力の高いリアルタイムPCR装置を購入し、研究をさらに加速させる予定である。
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