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2019 年度 実施状況報告書

局所麻酔薬のDNA脱メチル化機序の解明と麻酔、癌治療、再生医療への有用性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 18K08839
研究機関九州保健福祉大学

研究代表者

鬼塚 信  九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (20264393)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード局所麻酔薬 / DNAメチル化 / アポトーシス / 癌抑制遺伝子 / リアルタイムPCR / p53
研究実績の概要

麻酔薬が癌細胞の増殖を抑制やアポトーシスを誘導することを報告した。そこで、麻酔薬のDNA脱メチル化による癌細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導機序を検証した。
方法:Hela細胞を検体とした。麻酔薬のDNAメチル化への影響を検証すべく、麻酔薬に48時間暴露した癌細胞からDNAを抽出し、脱メチル化されたDNAを認識し切断するメチル化感受性制限酵素HAPⅡを用いて酵素反応を行った後、メチル化特異的定量的リアルタイムPCR法(MSP法)で解析した。癌抑制遺伝子のmRNA発現量を定量的リアルタイムPCR法で解析した。
結果:HAPⅡを用いて酵素反応を行った結果、麻酔薬により脱メチル化されたDNAが増加した(図1)。麻酔薬により癌抑制遺伝子p53のmRNAの発現が増加した(ΔΔCT値:リドカイン -2.63+-0.99、ブピバカイン 1.17+-0.9 プロカイン 0.4+-1.5 at 100uM)。メチル化感受性制限酵素処理後、メチル化特異的定量的リアルタイムPCR法(MSP法)で解析したところ、p53が脱メチル化されていた(ΔΔCT値:リドカイン 12+-2.5、ブピバカイン 0.7+-1.4 プロカイン 1.4+-0.7 at 100uM)。試験管内の実験系でDNAメチル化酵素(CpG Methyltransferase)によるDNAメチル化を局所麻酔薬は抑制した(ΔΔCT値:リドカイン 4.1+-0.95、ブピバカイン 1.17+-0.9 プロカイン 0.4+-1.5 Deoxyctidin 1.8+-1.2 at 100100uM)。
結語:リドカインなどの局所麻酔薬は、DNAメチル化酵素を直接的に阻害することでDNAを脱メチル化する機序により癌抑制遺伝子p53の発現を増加することで癌細胞増殖抑制およびアポトーシスを誘導しうる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで、癌患者に最適な麻酔法や麻酔薬の選択について研究してきた。そのなかで、局所麻酔薬は、癌の増殖や転移、悪性度の一因であるDNAメチル化に注目し、解析したところ、局所麻酔薬はDNA脱メチルか作用を有し、これにより癌細胞のDNAを脱メチル化することで、p53等の癌抑制遺伝子を活性化し、癌細胞にアポトーシスを誘導しうることを解明した。現在は、局所麻酔薬をはじめとした麻酔薬のDNA脱メチル化が免疫チェックポイントにおよぼす影響を検討することで、麻酔薬のDNAメチル化におよぼす作用が、腫瘍免疫におよぼすえいきょうについても、検討中である。

今後の研究の推進方策

現在、腫瘍免疫、とりわけ、PD1、PD-L1等の免疫チェックポイントが、癌の増殖や転移を抑制しうる機序として注目されている。研究代表者らは、麻酔薬がこれら免疫チェックポイント分子の発現や作用に影響することを見いだした。そこで、これら麻酔薬の免疫チェックポイント分子の発現や作用におよぼす影響に、DNA脱メチル化作用がどのように関与しているのかを検証中である。

次年度使用額が生じた理由

2019年度は、本研究のDNAメチル化解析に必要不可欠なリアルタイムPCRシステムを予定どうり購入したが、カタログ価格(定価)より安価で購入できたので差額が生じた。
この差額は、本年度の試薬代、消耗品代に補填する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 麻酔薬の癌細胞における免疫チェックポイント分子に及ぼす影響2019

    • 著者名/発表者名
      鬼塚信、白石成二
    • 学会等名
      日本麻酔科学会

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公開日: 2021-01-27  

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