麻酔薬が癌細胞の増殖を抑制することを報告してきたが、その機序は解明されていない。そこで、麻酔薬のDNA脱メチル化による癌細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導機序を検証した。 方法:Hela細胞を検体とした。局所麻酔薬のDNAメチル化への影響を検証すべく、麻酔薬に48時間暴露した癌細胞からDNAを抽出し、メチル化感受性制限酵素HAPⅡを用いて酵素反応を行った後、メチル化特異的定量的リアルタイムPCR法(MSP法)で解析した。癌抑制遺伝子のmRNA発現量を定量的リアルタイムPCR法で解析した。 結果:HAPⅡを用いて酵素反応を行った結果局所麻酔薬により脱メチル化されたDNAが増加した。局所麻酔薬により癌抑制遺伝子p53のmRNAの発現が増加した(ΔΔCT値:リドカイン -2.63+-0.99、ブピバカイン 1.17+-0.9 プロカイン 0.4+-1.5 at 100uM)。さらに、メチル化感受性制限酵素処理後、メチル化特異的定量的リアルタイムPCR法(MSP法)で解析したところ、p53が脱メチル化されていた(ΔΔCT値:リドカイン 12+-2.5、ブピバカイン 0.7+-1.4 プロカイン 1.4+-0.7 at 100uM)。 さらに、試験管内の実験系でDNAメチル化酵素(CpG Methyltransferase)によるDNAメチル化を局所麻酔薬は抑制した(ΔΔCT値:リドカイン 4.1+-0.95、ブピバカイン 1.17+-0.9 プロカイン 0.4+-1.5 Deoxyctidin 1.8+-1.2 at 100uM)。結語:リドカインなどの局所麻酔薬は、DNAメチル化酵素を直接的に阻害することでDNAを脱メチル化する機序により癌抑制遺伝子p53の発現を増加することで癌細胞増殖抑制およびアポトーシスを誘導しうる可能性が示唆された。
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