研究課題/領域番号 |
18K08841
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
西岡 慧 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 麻酔科フェロー (60755544)
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研究分担者 |
東 俊晴 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (60284197)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電気痙攣療法 / 静脈血栓塞栓症 / 精神疾患 / 身体拘束 / ニューロキニン1受容体 / スプライスバリアント / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
われわれは過去に電気痙攣療法(ECT)施行中患者を対象とし,深部静脈血栓症(DVT)の既往ならびに入院中の新規発症が肺血栓塞栓症(PE)の発症に与える影響について検討している(日本麻酔科学会第64回学術集会,神戸,2017).そこで,DVTの既往はPEの発症率に有意な影響を与えなかったが,DVTの新規発症はPEの発症率に有意な影響を与えていたと報告した.2018年度の研究において,われわれはさらに症例数を拡大し,同様な検討を行ったところ,前回発表と同様な統計学的傾向が再確認された.このことから,ECT施行中の患者においては,発生中のDVTを正しく診断することが,PE発症を抑止するうえで重要であると考えられるため,われわれの研究仮設の正当性がより強固となったと言うことができる. また,われわれは探索すべき静脈血栓塞栓症(VTE)発生を示す新規バイオマーカーとして全血中の完全長ニューロキニン1受容体(NK1R)遺伝子発現を想定している.単球に発現した完全長NK1Rを介した単球自身への刺激が単球由来のマイクロパーティクル発生を増加させるという仮説を立証するため,ヒト単球系細胞THP-1に完全長NK1R遺伝子が組み込まれたプラスミドをエレクトロポレーション法で導入し,マイクロパーティクル発生量を観察した.完全長NK1Rを発現したTHP-1は発言していないTHP-1と比較してより多くのマイクロパーティクルを発生することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示したように,ECT施行中入院患者を対象に,DVTの既往ではなく,入院中に新たに発生したDVTがPEの発生と関連することを確かめた.また,完全長NK1R遺伝子を強制発現させたヒト単球系細胞では,同遺伝子を発現していない細胞と比較し,血栓形成性を助長するマイクロパーティクルがより多く発生していたことを確認した.これらの実績から,本研究課題はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね計画通り進行中である.2019年度以降,ECT施行中の入院患者の全血を採取し,新規バイオマーカとして有力視しているNK1R遺伝子の発現が実際にとらえられるか,あるいはそれがPE発症と相関をもつかどうかについて検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究計画の中に,「完全長NK1R遺伝子発現のVTE発生のバイオマーカーとしての有用性を検討する」とした実験的研究が組み込まれていた.この研究は研究分担者である東 俊晴が実施することとしていたが,この分担者が本研究と別に参加している研究事業計画でも完全長NK1R遺伝子発現を解析する必要性があり,そちらの研究予算で当研究に必要な研究の実施が可能であったため,経費の必要性が減額された.次年度以降,網羅的遺伝子発現解析が予定されており,そこで多額の費用が必要であるため,次年度以降の研究経費に割り当てる所存である.
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