VTE予防ガイドラインでは電気痙攣療法(ECT)中の患者は長期臥床により中等度リスクに分類される非精神病患者と同程度リスクと見積られる.しかし抗精神病薬を服用している患者は服用歴のない患者より静脈血栓塞栓症(VTE)発症頻度が高いことが集団ベースの後ろ向き研究から指摘されており(BMJ 2010;341:c4245),身体拘束の状態にあるECT施行中患者のVTE発症危険度はさらに高いのではないかと推測される.ECT施行中の VTE発症に関する危険因子について後方視的に解析を行った. 当院でECTを施行された全入院患者を対象とし,診療録情報に基づきVTEの既往と入院中の新規発症頻度を統計学的に検討した(カイ二乗検定). 入院以前にVTE既往のある患者がそうでない患者より入院後VTEを発症しやすいという傾向は認められなかった.一方,DVT現症のある患者は無い患者と比較してPE発生率が高かった(P<0.01). DVTの現症はPE発症の有意な危険因子であったが,VTE既往はVTE発症の危険因子として検出されなかった.PE発症予防にはVTE既往の問診よりも入院後にDVTの有無を検索することがより重要であることが改めて確認された.
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