研究課題/領域番号 |
18K08846
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上野 伸哉 弘前大学, 医学研究科, 教授 (00312158)
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研究分担者 |
古川 智範 弘前大学, 医学研究科, 助教 (60402369)
櫛方 哲也 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (80250603)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GABA-A受容体 / 麻酔薬 / 受容体トラフィッキング / 受容体リン酸化 |
研究実績の概要 |
GABA-A受容体の細胞内トラフィッキング機構に受容体リン酸化とパルミトイル化がどのように関わるかの解析を進めた。神経系細胞(神経芽細胞腫)であるNeuro2A(N2A)細胞株を用い、mDsRed融合マウスGABA-A受容体beta3サブユニットのS408/9AorEおよびC288AのMutantを作成した。これらのMutant発現プラスミドを未分化のN2A細胞に導入し、レチノイン酸により神経細胞に分化させた後に形態観察を行った。さらにパルミトイル化も形質膜への移行を制御する可能性が予想されたため、今年度はC288部位にAlanine変異導入によるパルミトイル化を受けないプラスミド作製を行い、リン酸化変異との比較を行った。パルミトイル化もGABA-A受容体の形質膜移行を抑制する傾向がみられたが、リン酸化による抑制程度より少なかった。beta3サブユニットのS408/9AorEまたはC288AのMutantとalphaとgammaサブユニットの3種類のプラスミド一過性導入を行い、GABA惹起電流をパッチクランプ法により観察した。しかしながら、一過性導入ではmutantの発現が他のサブユニットより低いため電流応答によるキネティクス解析ができない。それに対処するためbeta3サブユニットS408/9A、S408/9E、C288Aのそれぞれのmutantを導入した安定発現株作製を行っている。 また、てんかん等の疾患、加齢、向精神薬の長期投与によりGABA-A受容体分布およびサブユニット構成の変化が報告されている。これらの病態においても麻酔効率の変動が合併している。この機構に本研究課題での受容体リン酸化が関連している可能性があり、病態モデル動物におけるGABA-A受容体の分布変化、発現変化を解析した。ベンゾジアゼピン系の長期投与、加齢による発現変化の解析を開始、継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GABA-A受容体のリン酸化のみならず、受容体パルミトイル化も麻酔効果の制御機構として機能することを明らかとし本研究目的の主要部分を進めた。さらに病態モデルにおけるリン酸化、パルミトイル化の麻酔効果への影響を解析している。
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今後の研究の推進方策 |
1)beta3サブユニットS408/9A、S408/9E、C288Aのそれぞれのmutantを導入した安定発現株を樹立し、alpha、gammaサブユニットとの同時発現により、GABA応答を電気生理学的にとらえ、リン酸化およびパルミトイル化の電流応答での効果を解析する。 病態モデルでのGABA-A受容体の発現変化、量および、サブユニット構成を解析する。2)GABA応答の変化と、麻酔効果、不安行動などの行動解析を加え、GABA応答制御機構と麻酔効果との関係を明らかとする。 3)発現安定株細胞をもちいてMutantのGABA-A受容体beta3サブユニットに直接もしくは関節的に結合・相互作用しているタンパクを免疫沈降法およびMS解析法により探索し、受容体のリン酸化に関わる分子を明らかにする。 4)Mutantサブユニットの細胞内局在について、免疫染色および細胞分画法による細胞内小器官抽出法により解析し、リン酸化およびパルミトイル化がトラフィッキングへ及ぼす影響を明らかにする。
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