研究課題/領域番号 |
18K08847
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
戸部 賢 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (90400770)
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研究分担者 |
小杉 謙介 朝日大学, 歯学部, 講師 (00650780) [辞退]
須藤 貴史 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60739621)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 局所麻酔薬 / 徐放化 / 術後痛管理 |
研究実績の概要 |
関西大学機能性高分子研究室と共同で温度応答性ポリマーを用いたレボブピバカイン徐放薬の作成に成功し、その徐放曲線を確認したところ2日間程度の薬剤放出を確認した。その徐放薬を用いて、ラット術後痛モデルを用いた行動実験ならびに毒性試験を行った。術後痛は臨床使用濃度の局所麻酔薬を用いたときに比べて長時間の鎮痛効果を示した。これは局所麻酔薬徐放薬が生体内(ラット)においてもゆっくり薬剤を放出していることの証明であり、温度応答性に薬剤放出することをサポートする結果かもしれない。臨床使用濃度より高い濃度の局所麻酔薬を神経周囲に用いると運動障害を生じることで知られるが、同じ薬剤濃度の局所麻酔薬を用いた際には麻痺の程度が強かったが、徐放薬を用いた際には麻痺の程度は少なかった。こちらも薬剤がゆっくり放出することをサポートする結果となったと言える。また投与部位周囲の神経や筋肉への影響を調査するために、投与部位周囲を広く固定して切片作成してH-E染色を行い、病理学的な評価を病理医に行っていただいた。結果としては、炎症細胞の浸潤は認められるが、筋肉や神経への直接的な影響は少なかった。現在これらの実験結果をまとめて、それらを考察し、これまでの研究テーマと比較しその意義について吟味したうえで投稿準備を行っている。 今後の展開としては薬剤を変えて徐放化を進め、局所麻酔薬との相乗効果などを狙って開発を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の移動制限などの影響により関西大学との情報交換の機会の減少により薬剤作成の議論がやりにくい環境ができてしまったことがひとつの要因である。 学会についても以前に比べて開催が少ないため、意見交換の場が少なくなっていて、それも影響がないとは言えない。 臨床研究を行うハードルがかなり上がったため、薬剤作成や動物実験に関してはこれまで同様の手法で研究を進めることができるが、その先の人への応用ということを考えると薬剤作成自体もかなり厳密にやる必要性がありコストが膨大になる。協力していただけるような製薬会社があればそのあたりは加速する可能性もあるが、現状作成した薬剤の効果や毒性の試験をもう少し進めるのが先決であり、研究結果へのヒトへの応用という点においては研究の進捗は遅れているといえる。 自由な往来が可能になった際には、さらに効果作用時間の長い薬剤作成や組織影響性の少ない薬剤の作成などを検討するために関西大学を含めて、また他の研究室とも積極的に議論を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在作成し研究を進めている温度応答性ポリマーを用いて作成したレボブピバカイン徐放薬は最大でも2日間程度の放出であるが、もう少し長くゆっくり放出するような製剤化を検討してみたいと考えている。また今回は比較的効果時間の長い局所麻酔薬ということでレボブピバカインを用いて作成しているが、同程度の作用時間のロピバカインに変更して薬剤特性が変わるかどうかに関して検討を追加したいと考えている。 動物実験はラットで行ったが、今後それらの結果を踏まえてより大動物での実験計画を立てたい。その中で薬剤効果持続時間と毒性の検討を行いたいと思う。大動物になると血液中の薬剤濃度推移も調査することができ、生体内での放出制御がどうなっているのかをより正確に検討することができるかもしれない。 一方でこれらの動物実験データがある程度揃って、前向きな結果となることに期待しつつ、ヒトでの応用に関しても様々な道を模索していきたいと考えている。ヒトに用いるためには、厳密な施設における薬剤作成が必要となり当施設にはそれらが備えられていないので、そのあたりのところから準備を進めたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19感染症の影響や仙台での地震の影響により、学会の開催が減少し、またweb開催となったため、当初予定していた学会参加にかかる費用が減少した。 関西大学機能性高分子研究室や京都大学再生医科学研究所など薬剤作成を一緒に検討していただいている教室との往来もコロナ禍で減少し、その移動にかかる費用や議論の場を設定する費用の請求が当初より減少した。 COVID19感染症の動向やまた社会のそれらへの対応変化がどのように変わっていくかによる部分も大きいので不確定な要素も多いが、今後ある程度正常化した際には、学会発表や他の研究室との意見交換の機会は増えることが予想されるため、それらの参加費用や移動費用は増えてくることが想定される。また様々なタイプの薬剤作成の検討に入ることができるとそれらの作成コストも増加することが予想される。
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