研究課題/領域番号 |
18K08848
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
麻生 知寿 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40436308)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 鎮痛薬 / 神経突起 |
研究実績の概要 |
成長発達中の神経系への麻酔薬の影響については、神経細胞のアポトーシスの増加やニューロン退縮が関与していると考えられており、実験幼若動物(マウス、ラット、サルなど)での実験結果が報告されていて、特に繰り返しの麻酔や長期間の鎮静後に脳や学習に障害が起こる事が知られており、主に中枢神経系のニューロンにおいて研究・解析が進められている。成長期の神経回路の形成には神経突起の伸長が重要な役割を果たす。麻酔薬など外因性の物質が神経回路の形成に及ぼす影響についてはあまり解析されていない。乳幼児・小児では適切な鎮静鎮痛が手術だけでなく検査などの場面でも重要であり今後使用頻度が増加すると予想される。麻酔薬や鎮痛薬の長期的な影響について検討しより安全な麻酔薬・鎮痛薬の選択を可能にすることは重要である。麻酔薬の神経系への作用は主に中枢のニューロンでの研究が注目されているが、成長期における神経系の発達、軸索伸張やシナプス形成、神経終末における麻酔薬や鎮痛薬などの影響は検討されていない。本研究の目的は、成長期の神経発達への薬剤の影響を解析することで、成長発達に大きな影響を与えない使用頻度や薬剤の種類やその組み合わせなど、臨床で推奨される麻酔薬や鎮痛薬の使用方法をみつけることである。 第一段階として、神経伸長に関わる神経突起に麻酔薬や鎮痛薬の作用部位(受容体)が存在するかを確認する。神経突起伸張の観察可能な神経培養細胞を各種受容体の抗体を用いて免疫染色を行い、受容体の発現の有無を観察する。また、麻酔薬・鎮痛薬による細胞内シグネル伝達の変化を解析し、実際に麻酔薬・鎮痛薬が薬理学的作用を及ぼしているかを確認する。第二段階としてはどの麻酔薬・鎮痛薬投与が実際に神経突起の形態学的変化をもたらすかを解析することである。具体的には、培養細胞において神経突起の伸長長、伸長速度、神経成長円錐先端の崩壊頻度を計測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞の神経突起部における各種受容体の発現状態の確認を行った。有精卵を孵卵器で10日間孵化し実体顕微鏡下に脊髄後根神経節を採取、BPE添加F12培 地で20時間共培養を行い、20時間後に観察し細胞体や神経突起の観察を行っている。麻酔薬・鎮痛薬が結合すると想定されている受容体の発現の確認は順次行えているが、一部安定的に確認されないものもあり抗体を変更して引き続き行っている。カンナビノイド受容体の作動薬・拮抗薬の神経伸張・退縮、成長円錐崩壊への影響については一定の傾向が確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
神経突起上の受容体発現について、免疫染色用抗体の種類や条件を変更し引き続き行っていく。 発現が確認された受容体については、それぞれの作用薬・拮抗薬を用いて神経細胞突起の伸張・退縮、成長円錐崩壊の頻度を計測する。記録には、自動焦点補正タイムラップスビデオシステムを用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色に用いる各種抗体や条件の変更に関わる費用、薬物負荷実験に用いる吸入麻酔薬・静脈麻酔薬・鎮痛薬の購入費用、培養細胞の維持費用、記録システムの維持費用が必要となる。
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