本研究では、成長期の神経発達への薬剤の影響の解析を行い、成長発達に大きな影響を与えない使用頻度や薬剤の種類およびその組み合わせなど、臨床で推奨される麻酔薬や鎮痛薬の使用方法の検討を目的とした。第一段階として、神経伸長に関わる神経突起に麻酔薬や鎮痛薬の特異的な作用部位(受容体など)が存在するかを確認した。神経突起伸張を観察することが可能な神経培養細胞に神経伝達物質が結合する受容体や鎮痛薬・鎮静薬の結合部位の発現の有無を観察するために、培養細胞を固定後、各種抗体を用いて免疫染色を行った。第二段階としてはどの麻酔薬・鎮痛 薬投与が実際に神経突起の形態学的変化をもたらすかを検討した。具体的には、培養細胞において神経突起の伸長長、伸長速度、神経成長円錐先端の崩壊頻度を計測した。 胎生10日目のchick DRGを採取し、BPE添加F12培地で20時間共培養を行い、GABA受容体、グリシン受容体、グルタミン酸受容体、NMDA受容体、オピオイド受容体、カンナビノイド受容体、アセチルコリン受容体の抗体で免疫染色を行い、その分布を確認した。カンナビノイド受容体については発現が確認され、受容体作動薬(2-アラキドノイルグリセロール:2-AG)を作用させても培養の継続が可能であった。その他の受容体に関しては発現の確認、安定的な培養系の確立が行えていない。カンナビノイド受容体については、神経突起の伸長長、伸長速度、神経成長円錐先端の崩壊頻度の計測を行った。培養液に2-AGを加えたところ、濃度依存的に神経円錐の崩壊と神経伸長の減少が観察された。その他の受容体については抗体、培養条件の変更の検討を行っている。
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