研究課題/領域番号 |
18K08849
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
倉田 二郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50349768)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能的磁気共鳴画像法 / 拡散強調画像法 / Voxel-based morphometry / オフセット鎮痛 / 下行性疼痛修飾系 / 報酬系 / 慢性痛 / 機能的結合性 |
研究実績の概要 |
1. <急性疼痛消失時の脳活動の研究> 慢性痛患者25名および健康被験者20名を対象に、温熱刺激によるオフセット鎮痛パラダイムを用いて機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を施行した。慢性痛患者は痛み消失時に頭頂感覚連合野と紡錘状回で高い脳活動を呈し、そのblood oxygenation level-dependent (BOLD)信号が痛みスコアや破局化思考スコアと相関した。紡錘状回は前頭前皮質と高い機能的結合性を呈し、その痛み修飾機能を抑制している可能性が示唆された。 2. <オフセット鎮痛の脳活動の研究> 慢性痛患者25名および健康被験者19名を対象に、上記同様のオフセット鎮痛fMRIを施行した。慢性痛患者はオフセット鎮痛時に視床、視床下部、楔前部、舌状回のBOLD信号が低下していた。視床と頭頂感覚連合に及ぶ領域がオフセット鎮痛に関与する可能性が示唆された。 3. <慢性痛患者の白質機能変化の研究> 慢性痛患者26名および健康被験者18名を対象に全脳拡散強調画像及び三次元高精細解剖画像を取得した。慢性痛患者では、脳梁、放射冠、外包、上縦束、視床放線など広範囲に渡る白質で有意にfractional anisotropyが低下し、脳梁と放射冠で有意にradial diffusivityが増加した。また、外側後頭皮質及び楔前部における灰白質体積が有意に低下した。これらの変化は、痛み破局化思考スコアとよく相関し、痛みの情動認知障害を反映すると考えられた。 4. <東京慈恵会医科大学における脳画像ラボの確立> 臨床に供用される3テスラMRIスキャナ(Skyra, Siemens社, ドイツ)に追加工事を行い、痛み刺激装置との同期撮像システムを完成。1秒毎に全脳を撮像する高速fMRIシークエンスを含むマルチモーダルMRI研究プロトコールを実現した。慢性痛患者と健康被験者を対象に研究継続中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
オフセット鎮痛のマルチモーダルMRIによるMRI研究、および慢性腰痛患者の腰痛関連脳活動のfMRI研究から、合計77人分の脳画像データを蓄積し、様々な角度から解析を推進して慢性痛の脳内メカニズムに迫る解析を推進している。 一方で、2020年度は当初から緊急事態宣言などの影響で東京慈恵会医科大学での被験者リクルートが困難になり、共同研究施設との往来や研究推進が大きく制限された。その結果、被験者数が比較的伸び悩み、浜松医科大学および京都大学との共同研究推進が制限された。本研究の主要部分であるミクログリア画像化PETの施行が叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
東京慈恵会医科大学でのMRI撮像・研究環境整備に成功したため、本年度は慢性痛患者と健康被験者のリクルートを通常通りに進め、特に治療前後の縦断的研究を重点的に推進する予定である。 浜松医科大学との共同研究を、遠隔会議と迅速な倫理申請により実質的に開始し、パイロット研究として3人の慢性痛患者を対象にミクログリアPETを実行する予定である。より多数の被験者へのPET撮像を可能にすべく、更なる競争的資金獲得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言などの影響により研究施行が大幅に制限されたため。当初の予定通り、東京慈恵会医科大学でのマルチモーダルMRI、および浜松医科大学とのミクログリアPET共同研究にこれらの殆どの研究資金を用い、当初の研究目標を達成する予定である。
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