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2019 年度 実施状況報告書

悪性高熱症の新規原因遺伝子の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K08856
研究機関広島大学

研究代表者

安田 季道  広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (20432718)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード悪性高熱症 / リアノジン受容体 / 原因遺伝子 / ジヒドロピリジン受容体 / 遺伝子変異
研究実績の概要

悪性高熱症の原因の一つとして,リアノジン受容体の遺伝子変異が指摘されてきた.近年,リアノジン受容体以外の遺伝子が悪性高熱症の原因となっている可能性が指摘されている,現在,標準的に行われている悪性高熱症の機能解析の方法では,リアノジン受容体の遺伝子変異の機能解析は可能であるが,他の遺伝子の機能解析を行なうことはできない.今回の研究ではリアノジン受容体以外から発見された遺伝子変異が悪性高熱症の原因であるか否かを確認するための新たな実験系を構築し,それらの機能解析を行っていく.一昨年度はCACNA1Sのノックアウト細胞を細胞株であるC2C12で作製することを目的に実験を行ってきたが,ノックアウトされた細胞を選択的に回収することができずに停滞していた.それ故,これからCACNA1Sあるいはそれ以外の新規の原因遺伝子の候補にノックインを導入する際には細胞株で実験を続けるよりもマウスを使用した実験に変更したほうが良いのではないかと指摘された.昨年度は,悪性高熱症の新規原因遺伝子を継続的に検索していきながら,ノックインマウスを作製するための実験を行える環境づくりを行った.まず,実際にノックインマウスを作製する遺伝子変異の候補を選定した.CACNA1Sの遺伝子変異候補としては,p.F1161L, p.S879P, p.D1382V, p.A560Tが挙げられた.これらはいずれもCADDが26以上と高く,mutation taster, PolyPhen2およびSIFTなどのアルゴリズムにおいて病原性が高いことが確認された.CACNA1S以外のいわゆる新規の原因遺伝子の候補としては,ORAI1が挙げられた.ORAI1のどの部位の遺伝子変異がより確からしいか検討を重ねている.ノックインマウスを実際に作製するための準備としては,大学内で組換えDNA実験および動物実験の実験計画書を提出して,審査を通過した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

細胞を用いた実験系を構築するために,まずCACNA1Sのノックアウト細胞を細胞株であるC2C12を用いて作製しようとしたが,ノックアウトされた細胞を選択的に採取することができずに停滞していた.マウスにおけるノックインの導入効率が細胞株へのノックイン効率よりも安定している可能性が高く,カンファレンスにおいてこのまま細胞の実験系を構築することに時間を費やすよりもCACNA1Sあるいはそれ以外の新規の原因遺伝子の候補にノックインを導入する際にはマウスを使用した実験系を新たに構築したほうが良いのではないかと指摘された.それゆえ,昨年度からは悪性高熱症の新規原因遺伝子を継続的に検索していきながら,ノックインマウスを作製するためのシステムづくりを行っており,当初からその可能性は指摘していたが,実験系を新たに構築することになったことで遅れが生じている.マウスのノックインを行うための大学内での審査を通過させる間に,どの遺伝子のどの部位のノックインマウスを作製するか情報を再度見直し検証してきた.CACNA1Sの遺伝子変異の導入を当面の目標とするが,新規の原因遺伝子の候補が確認された場合はそちらのノックインマウスの作成を先に検討していく可能性がある.

今後の研究の推進方策

今年度は,昨年度に候補として挙がった悪性高熱症の原因遺伝子変異に関して,ノックインマウスを作製していく予定である.ノックインマウスの作製に関しては大学内の動物実験施設と共同研究という形で行っていく予定である.自然科学研究支援開発センター 外丸 祐介教授に研究分担者に入っていただくように依頼する予定である.具体的に,どの遺伝子変異をノックインするかは,まず何系統のノックインマウスを作製することが可能か検討し,その数に応じてCANA1Sの違った部位のノックインマウスを何系統か作成するのに加えて,可能であればORAI1などの新規の原因遺伝子の遺伝子変異のノックインマウスも作製する予定である.表現型の確認には,作成されたマウスを揮発性麻酔薬で麻酔した時の体温をはじめとするさまざまなバイタルサインの変化および死亡率をlittermateの野生型をコントロールとして比較する.マウスに麻酔を行い,バイタルサインをモニタリングするためのシステムは現在構築中である.ノックインマウスを作製するのに並行して完成させるようにしたい.以前のわれわれの検討ではCACNA1Sが原因の悪性高熱症はRYR1が原因の悪性高熱症に比較して表現型が乏しい可能性があるため,バイタルサインの変化および死亡率から悪性高熱症の原因となりうるかを確認できない可能性もある.それらで確認できなかった場合は,ノックインマウスから採取した筋細胞を用いた実験を行っていく必要があるかもしれない.

次年度使用額が生じた理由

一昨年度施行していた細胞株からノックアウト細胞を作成する実験において,実験が予定通り遂行できなかった.その理由として,細胞株にゲノム編集を行うこと自体が難しいことがあげられた.また,細胞株でゲノム編集を行ってノックインを作成できたとしても,ノックインマウスを用いた実験を追加で行わなければならない可能性およびゲノム編集によるノックインマウスの作製は細胞株へのノックインよりも確立された方法であることなども指摘された.そのため一昨年度途中から細胞株での実験は一旦休止し,ノックインマウスを作製するための準備にとりかかった.昨年度は大学内の組み換え遺伝子実験計画及び動物実験計画の審査を通過させるために時間を要したため,消耗品を購入するための費用をほとんど使用しなかった.これらの審査には昨年度に無事通過したので,今年度はノックインマウスの作製に関して動物実験施設と共同研究で行うことで研究を加速していきたい.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Branched-chain amino acids-induced cardiac protection against ischemia/reperfusion injury.2020

    • 著者名/発表者名
      Satomi S, Morio A, Miyoshi H, Nakamura R, Tsutsumi R, Sakaue H, Yasuda T, Saeki N, Tsutsumi YM
    • 雑誌名

      Life Science

      巻: 245 ページ: 117368

    • DOI

      10.1016/j.lfs.2020.117368

    • 査読あり
  • [学会発表] チーム管理で術後痛を改善する 「チームで術後痛管理を行うために準備すべきこと2019

    • 著者名/発表者名
      安田季道
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 悪性高熱症患者で発見された1型リアノジン受容体の一塩基多型E3756Qの機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      近藤 隆志,安田 季道, 神﨑 理英子, 向田 圭子, 濱田 宏, 河本 昌志
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
  • [学会発表] 悪性高熱症の原因遺伝子スクリーニング2019

    • 著者名/発表者名
      神﨑理英子、安田季道、向田圭子、森野豊之、川上秀史、河本昌志
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
  • [学会発表] 硬膜外カテーテル抜去後早期にNSAIDsまたはアセトアミノフェンが必要となる要因の検討2019

    • 著者名/発表者名
      笹部 祥子,三好 寛二, 中村 隆治, 安田 季道, 濱田 宏, 河本 昌志
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
  • [学会発表] 肝切除術の患者自己調節硬膜外鎮痛法(PCEA)におけるカテーテル留置椎間と鎮痛効果2019

    • 著者名/発表者名
      吉村 晴香,三好 寛二, 中村 隆治, 安田 季道, 濱田 宏, 河本 昌志
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
  • [学会発表] ロボット支援前立腺全摘除術におけるエントロピー値の検討2019

    • 著者名/発表者名
      原木 俊明,安田 季道, 佐伯 昇, 神﨑 理英子, 濱田 宏, 河本 昌志
    • 学会等名
      第66回日本麻酔科学会年次総会
  • [学会発表] Functional Analysis of Newly Found Ryanodine Receptor 1 Variants in Malignant Hyperthermia Susceptible Patients2019

    • 著者名/発表者名
      Yuko Noda, Toshimichi Yasuda, Hirotsugu Miyoshi, Keiko Mukaida, Hiroshi Hamada
    • 学会等名
      ANESTHESIOLOGY annual meeting
  • [学会発表] モルヒネを用いた術後鎮痛でのドロペリドール添加による術後悪心嘔吐の抑制効果の検討2019

    • 著者名/発表者名
      中川 亜耶, 三好 寛二, 中村 隆治, 加藤 貴大, 安田 季道, 濱田 宏, 堤 保夫
    • 学会等名
      日本臨床麻酔学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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