研究課題/領域番号 |
18K08858
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村田 寛明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (90437856)
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研究分担者 |
上園 保仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
宮野 加奈子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (50597888)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オピオイド / 脱感作 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、In vitroでのオピオイド鎮痛薬併用実験を継続した。μオピオイド受容体(MOR)に作用して鎮痛効果を発揮するオピオイド鎮痛薬のうち、周術期に用いられるレミフェンタニル(RF)とフェンタニル(FEN)に焦点を当て、より詳細な検討を行った。RFあるいはFENが既に投与されている状態で同一薬剤を追加投与した場合(RF/RF or FEN/FEN)、あるいはRF存在下にFENを追加投与した場合(RF/FEN)に観察される脱感作の程度を、CellKeyシステムを用いてGPCR活性を測定することで解析した。 MORの活性評価にはMOR発現HEK293細胞を用いた。RFおよびFENを単回投与した際のdose-response curveでは、両者のEC50およびEmaxは同等であった。RF/RFにおいて同一濃度での連続処置を行った場合、3 nM以上で脱感作を認めた。一方でFEN/FENにおいて同一濃度での連続処置では1 nM以上で脱感作を認めた。2回目の投与で1回目と同等の活性反応を得るには、1回目RF(3 nM)の場合2回目RFは10 nM必要であった。一方、1回目FEN(1 nM)の場合2回目FENは10 nM、1回目FEN(3 nM)の場合2回目FENは100 nMを必要とした。すなわち、RFとFENの単回投与によるMORの活性化は同等であるが、FENはRFより脱感作を生じやすいことが明らかとなった。 次にRF投与下にFENを追加投与した場合、1回目RF(3 nM)と同等の反応を得られる2回目FENの濃度は1 nMであった。すなわち、投与するオピオイド鎮痛薬をRFからFENに変更すると脱感作が生じにくいことが示唆された。 RF投与下のFEN投与は周術期によく用いられるため、この投与法で脱感作が抑制されるという現象は臨床的意義も高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は実施できず本年度に持ち越していたオピオイド鎮痛薬の併用パターンである1回目レミフェンタニル/2回目フェンタニルという組合せについては、データを蓄積することができ、脱感作を抑制できる投与パターンであることを見出すことができた。しかし、そこから先の分子機序の解明に関しては、現在研究を進めているものの前年までの遅れを取り戻すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
レミフェンタニル投与後のフェンタニル投与が脱感作を抑制するという現象が観察されたため、臨床的意義のあるこの現象の作用機序を解明することを優先することが望ましいと考えている。具体的に、まずはMORのinternalizationに関与するβアレスチンの活性をPathHunter eXpress β-Arrestin Kitを用い測定を開始している。また、βアレスチン以外の経路についても解析を進める計画である。その後、脱感作抑制に関連するより詳細なデータ蓄積のためにリアルタイム可視化アッセイも行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、本年度に予定していたリアルタイム可視化アッセイ実験を実施する回数が少なかったため、試薬等に使用する予算を必要としなかった。また、学会参加や研究分担者施設を訪問しての打ち合わせを見合わせたことにより、これらに関連する経費が不要であった。今後は、リアルタイム可視化アッセイの実施回数が増えることが想定されるため、そこに次年度使用額を充当する予定である。
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