オプトジェネティクス(光遺伝学的手法)は遺伝子導入によって光応答性タンパクを目的とする細胞に発現させ、光を当てるだけで細胞応答を変化させる技術である。標的とする神経細胞に光感受性チャネルを発現させ、光をオン・オフすることで無数にある神経の中から特定の神経細胞の選択的興奮・抑制を行うことができる。この技術を痛み研究に応用することで特定の神経回路を刺激あるいは抑制できるようになり、痛みの伝達回路の解明やより正確な痛みの評価が可能になる。本研究の目的は、痛みに関与する電位依存性Na+チャネルNaV1.7、NaV1.8、NaV1.9が発現している脊髄後根神経節ニューロンに選択的に光感受性チャネルChR2を発現させて、神経障害性疼痛における役割を解明することである。最終年度で、計画していたすべてのマウス(NaV1.7iCre/+;Ai32/+、NaV1.8iCre/+;Ai32/+、NaV1.9iCre/+;Ai32/+)を得ることができた。von Frey testとPlantar testを行い、機械的刺激と温熱刺激に対する疼痛応答は野生型と違いがないことを確認した。また、足底への青色LED光照射試験では、いずれのマウスも足を引っ込めるという疼痛応答を示した。また光嫌悪性試験として青色LED光の床と緑色LED光の床の部屋を自由に行き来する実験を行ったところ、青色の部屋の滞在時間が野生型よりも有意に短くなった。そして、脊髄後根神経節で、それぞれのNa+チャネルと光感受性チャネルChR2が共発現していることを組織免疫染色で確認した。
|