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2019 年度 実施状況報告書

グリア細胞におけるSmadシグナリングは脳虚血後の脳内炎症反応を制御するか?

研究課題

研究課題/領域番号 18K08862
研究機関大阪府立大学

研究代表者

中島 崇行  大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30333644)

研究分担者 竹中 重雄  大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (10280067)
近藤 友宏  大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (40585238)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード全脳虚血 / ミクログリア / アストロサイト / 海馬 / Smad
研究実績の概要

本研究の目的は、「グリア細胞におけるSmadシグナリングは虚血後の脳内炎症反応を制御するか?」を全脳虚血モデルラットを用いて調べることである。
今年度は虚血後の海馬で検出されるリン酸化Smad1/5/8陽性細胞とリン酸化Smad3陽性細胞の単位面積当たりの出現数を調べることでSmadが活性化している細胞の数を定量解析した。すると、偽手術ラットではリン酸化Smad1/5/8陽性細胞数が1.03±0.93個/mm2であったのに対して、虚血7日後では34.97±13.56個/mm2と有意に増加していた。一方、リン酸化Smad3陽性細胞数は偽手術ラットで24.1±10.7個/mm2であったのに対して、虚血7日後では245.2±46個/mm2と有意に増加していた。リン酸化Smadに対して陽性反応を示すのはミクログリアやアストロサイトであることはすでに確認している。また、虚血後の海馬でのTGF-β1 mRNAの発現レベルの上昇はすでに確認しているので、今回、TGF-β1に対する受容体キナーゼALK5の阻害剤(Smadリン酸化阻害剤)SB525334を用いて、虚血後に誘導されるSmadのリン酸化がTGF-β1の影響を受けているのかどうかについて検討した。具体的には5分間の全脳虚血を行った4、5、6日後に脳定位装置を用いて左右の側脳室内にSB525334を投与した。コントロールとして溶媒を投与した。虚血の7日後に安楽死を行って灌流固定を行い、免疫染色に使用する脳の凍結切片を作製した。リン酸化Smadに対する免疫染色を行うと、溶媒投与のコントロールの切片と比べるとSB525334を投与した切片において虚血後に誘導されるSmadリン酸化の程度が減少する傾向にあることを確認した。このことから、虚血後の海馬グリア細胞においては、TGF-β1-ALK5-Smadシグナリングが活性化することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

脳室内に投与するSB525334の投与条件を決定するのに時間を要したために現在までの研究の進み具合が遅れている。具体的にはSB525334を脳室内に投与して脳内のSmadのリン酸化を抑制させた研究報告が見当たらず、投与条件を一から検討する必要があった。実験を行うに際して、培養グリア細胞へ10μM SB525334を添加することによってTGF-β1誘導性のSmadリン酸化が抑制されるとの報告例を参考にした。虚血から7日後に多くのリン酸化Smad陽性のグリア細胞が検出されたことから、まず、虚血から6日後に最終濃度が10μM程度になるようにSB525334を脳室内に単回投与したが、溶媒投与と比較して虚血後のSmadリン酸化のレベルを減少させるには至らなかった。その後、試行錯誤を繰り返し、現在、虚血から4、5,6日後に40μM SB525334を左右の脳室に単回投与することとした。この条件でSB525334を脳室内に投与すると、虚血後に誘導されるSmadのリン酸化を減少させる傾向が得られるようになった。

今後の研究の推進方策

令和2年度は以下の2つの項目について検討することを計画している。
(1)Smadシグナリングの炎症反応への影響についての検証
SB525334の脳室内投与により、「虚血後の炎症反応が促進されるのか?」あるいは「抑制されるのか?」を調べる。SB525334の炎症反応への効果は各種サイトカインの発現レベルとグリア細胞増殖レベルの変化によって判断する。虚血後の海馬における各種サイトカイン発現レベルは、PCR法あるいはウェスタンブロット法にて評価する。一方、グリア細胞の増殖は、グリア細胞のマーカータンパク質の発現レベルの変化をウェスタンブロット法により評価する。
(2)Smadシグナリングを介した炎症反応制御による虚血後の脳機能への影響の検証
脳虚血を受けたラットでは、脳機能が低下することが報告されている。(1)の実験の結果、Smadシグナリングが炎症反応を促進する場合は、①「受容体のキナーゼ活性阻害剤の脳室内投与(Smad活性の抑制)で脳機能が改善するか?」について調べる。一方、Smadシグナリングが炎症反応を抑制する場合は、②「リガンドの脳室内投与(Smad活性の促進)で脳機能が改善するか?」について調べる。具体的には、虚血後、グリア細胞でのSmad活性が上昇する時期にリガンド受容体キナーゼ阻害剤あるいはリガンドを脳室内に投与し、虚血の10~15日後に脳機能の評価を行う。脳機能の評価は以下の行動解析によって行う。

次年度使用額が生じた理由

実験の進行が遅れており、今回計画していた「Smadシグナリングの炎症反応への影響についての検証」の実験が行えなかったため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 全脳虚血後の海馬グリア細胞におけるSmadの発現とその活性について2020

    • 著者名/発表者名
      中島 崇行、髙橋 勇祐、竹中 重雄
    • 学会等名
      日本解剖学会
  • [学会発表] The Expression and Activation of Smad proteins in Glial Cells of the Rat Hippocampus After Transient Global Cerebral Ischemia2019

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Takahashi, Shigeo Takenaka and Takayuki Nakajima
    • 学会等名
      7th Congress for Asian Association of Veterinary Anatomists (AAVA)
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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