研究課題/領域番号 |
18K08866
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山口 敬介 順天堂大学, 医学部, 教授 (10338410)
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研究分担者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
井関 雅子 順天堂大学, 医学部, 教授 (80221076)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / 認知機能障害 / サブスンタンスP / 認知症の行動・心理症状 / 脳内炎症 / U373MG細胞 / シグナル伝達系 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎え、認知症患者の増加が医学的、社会的問題となっている。認知症の治療では、認知機能障害の治療のみならず、認知症にともなう行動・心理症状(BPSD) 治療も重要である。 近年、慢性疼痛が認知機能低下および認知症発症リスクの増加に関連することが報告され、慢性疼痛の適切な治療が認知症の予防策になりうると考えられる。神経伝達物質であるサブスタンスP(SP)は疼痛や炎症惹起に深く関わっており、慢性疼痛における持続性炎症と深い関連が指摘されている。一方、漢方薬である抑肝散はBPSDの改善効果をはじめ、神経障害性疼痛に対する鎮痛効果が報告されている。 本研究ではSPとその受容体であるNK1受容体シグナル伝達系に注目し、慢性疼痛の認知症に及ぼすメカニズムと、さらに抑肝散の鎮痛メカニズムを解明することを目的とする。本研究成果は、慢性疼痛および認知症とその周辺症状の治療法確立に役立つことが期待される。 本年度は、1.NK1Rを介する細胞内情報伝達経路と抑肝散の影響についての検討:U373MG細胞を用い、SPがMAPキナーゼ、特にERK1/2やP38 MAPKを活性化させることをウエスタンブロット(WB)法により測定した。2.抑肝散の炎症性サイトカイン産生抑制効果についての検討:SP刺激によって惹起される炎症性サイトカインのmRNAの発現・産生定量した。さらに抑肝散による発現への影響を検討した。3. 抑肝散の炎症性転写因子NF-kB活性化抑制効果についての検討:同様に、SP刺激によって惹起されるNF-kBのリン酸化をWB法を用いて測定した。さらに抑肝散による発現への影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の結果として、抑肝散添加によりSP刺激によるERK1/2, P38 MAPKのリン酸化活性が濃度依存的に抑制されることが得られた。また、SP刺激によるNF-kbのリン酸化、核内移動が濃度依存的に抑制され、さらに抑肝散添加により、培養液中のIL-6およびIL-8の産生が抑制されることが示された。一方、COX2発現が抑肝散により抑制されることが示された。初年度の研究計画は概ね順調に遂行できており、論文投稿の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. NK1受容体を介する細胞内情報伝達経路と抑肝散の影響についての検討-(in vivoによる研究):抑肝散の効果を、マウス坐骨神経結紮モデルを用いて解析する。2. 抑肝散の炎症性サイトカイン産生抑制効果についての検討:前年度の解析を基に、マウス坐骨神経結紮モデルを用いて、抑肝散の炎症性サイトカイン(IL-1b;,IL-6, IL-8, TNF-a)のmRNAの発現・産生をRT-PCR法で、タンパク質レベルをELISA法で定量する。3.抑肝散の炎症性転写因子NF-kB活性化抑制効果についての検討:同様に、SP刺激によって惹起される末梢血単球のNF-kB活性を、ウエスタンブロット法を用いて測定する。さらに抑肝散による発現への影響を検討する予定である。 また、平成30年度と同内容に実験を、ヒト・ミクログリアHMC3細胞でも実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度は概ね計画通りに遂行できたが、消耗品などは、過去に購入したものを流用できたため、予算を使い切るには至らなかった。 次年度は、ELISAキットなどの消耗品を順次購入予定である。
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