研究課題
超高齢化社会を迎え、認知症患者の増加が医学的、社会的問題となっている。認知症の治療では、認知機能障害の治療のみならず、認知症にともなう行動・心理症状(BPSD) 治療も重要である。近年、慢性疼痛が認知機能低下および認知症発症リスクの増加に関連することが報告され、慢性疼痛の適切な治療が認知症の予防策になりうると考えられる。神経伝達物質であるサブスタンスP(SP)は疼痛や炎症惹起に深く関わっており、慢性疼痛における持続性炎症と深い関連が指摘されている。ヒト・マイクログリア細胞であるHMC3を用いた実験では、アストロサイト起源であるU373MG細胞同様、SPによるMAPキナーゼの活性化、炎症性サイトカインであるIL-6およびIL-8の産生増加することを確認した。さらに同細胞を用い、抗せん妄作用を有するとされるデクスメデトミジン(DEX)の、リポ多糖(LPS)刺激に対する抑制作用検討を継続した。その結果、DEXは濃度依存的にLPSによるIL-6、IL-8産生を抑制することが示唆され、そのメカニズムの一部にIkBのリン酸化阻害効果、NF-kBの核内移動の阻害作用が関与していることを証明した。DEXの抗せん妄作用が、ミクログリアでの抗炎症作用が関与している可能性が考えられた。本研究において、ヒト・マイクログリアおよびアストロサイトでのSPおよびLPS刺激による活性化に対し、抑肝散、DEXが抑制的に作用することが示された。本研究成果は、慢性疼痛および認知症とその周辺症状の治療法確立に役立つことが期待される。
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