研究課題
本研究では敗血症などのヒト感染症において、原因菌として高頻度に現れる細菌に対する抗体を複数作製する。そして、これらの抗体のカクテルを感染初期に投与することによって感染症の鎮圧を目指す。前年度の先行研究において次世代DNAシークエンサーを用い敗血症、尿路感染症、肺炎患者血液の感染菌解析を行った。しかし高頻度に出現する菌はあるが、抗体作製のための標的細菌として決定するにはまだ症例数が足りないと考えられたため、今年度も引き続き附属病院の診療科と共同で、敗血症患者血液、尿路感染症患者の尿、肺炎患者の喀痰等の20数例の検体の確保を行った。そしてこれらの検体からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて感染菌同定を行った。この結果、それぞれの感染症疾患で高頻度に検出される感染菌が明らかになってきた。例えば尿路感染症の尿はこれまで計13検体の解析を行ったが、Aerococcus urinae (A. urinae)やEscherichia coli (E. coli)が高頻発菌であることが判明した。この結果をもとに、尿路感染症においては中和抗体の標的感染菌候補をA.urinaeとE. coliと定めた。データベースよりこれらの細菌の細胞外タンパク質の幾つかのDNA配列を入手した。そして、抗原性の高そうな領域を選定した。抗原作製に向け、E. coli標準菌からは全DNAを精製した。引き続き抗原タンパク質コード部分の遺伝子のクローニングに着手した。今後、ポリヒスチジン融合タンパク質を作製しマウスを用いてモノクローナル抗体の作製に着手する予定である。
3: やや遅れている
作成する抗体の標的細菌を定めるための全段階として、さらに患者検体を解析して高頻度標的細菌を確定させる必要があったため。
候補とした抗原タンパク質はポリヒスチジンとの融合タンパク質とし、大腸菌で発現させニッケルカラムで精製する。これらの抗原を用いてマウスからモノクローナル抗体を作製していく予定である。
本プロジェクトへの前段階であるNGSによる標的細菌の同定に時間がかかり、本プロジェクトへの着手が遅れたため。発現ベクター、抗原、抗体作製に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 511 ページ: 665-670
doi: 10.1016/j.bbrc.2019.01.136.
PLoS One
巻: 13 ページ: e0202049
10.1371/journal.pone.0202049. eCollection 2018.