これまで予め定めた標的タンパク質に対するペプチド抗体を作製し、それらの抗菌活性を測定したが、効果の見られた抗体は得られなかった。そこで今年度は方針を転換し、MRSAの膜タンパク質を抗原として抗体を作製することとした。培養後の菌体をリゾスタフィンによって細胞壁を消化し、グアニジンイソチオシアネート系のDNA/RNA抽出試薬を用いて核酸画分とタンパク質画分とに分離した。得られたタンパク質画分をマウスに免疫しハイブリドーマを樹立した。この中から、グルタールアルデヒドで固定した菌体を固相抗原としてクリーニングを行い、抽出した変性タンパク質だけでなく、菌体表面の構造を保ったタンパク質を認識するハイブリドーマを選別した。これらハイブリドーマを腹水化しProtein Aによる精製を行った。最終的に得られた4種の抗体の抗原を同定すべく、ウエスタンブロットによって抗原タンパク質(菌抽出タンパク質)と反応するバンドを探した。いずれの抗体においても、幾つかのバンドも見られたものの、主要な反応物は50kDa~200kDaのスメア状となり、抗原はヘテロな構造体であることが示唆された。 菌増殖阻害活性を阻止円法で求めた。しかしいずれの抗体にも菌増殖抑制活性は見られなかった。一方、陽性対照としたバンコマイシンでは菌増殖に対する阻止円形成が見られた。以上より今回作製した各抗体は、それぞれ単独では抗菌活性は発揮しないこが判明した。今後は、他の抗体あるいは抗菌剤との組み合わせで抗菌活性を評価していく予定である。
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