研究課題/領域番号 |
18K08869
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
姜 卓義 東海大学, 医学部, 助教 (60580256)
|
研究分担者 |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | シアロルフィン / アロステリック / オピオイド受容体 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでにendopeptidase-24,11(NEP),aminopeptidase (APN),dipeptidylcarboxypeptidase (DPP)の主に3種のペプチド分解酵素によって内在性オピオイドペプチドは加水分解されることを明らかにしてきた。近年、ヒト、ラット唾液腺よりモルヒネの約3-6倍の鎮痛効果を有するオピオルフィン、シアロルフィンがそれぞれ発見された。オピオルフィン、シアロルフィンはオピオイドペプチドの分解酵素を阻害する作用により鎮痛効果を示すと考えられてきた。本研究でシアロルフィンが3種のペプチド分解酵素阻害剤(アマスタチン、カプトプリル、ホスホラミドン)共存下において、in vitro (マウス輸精管摘出標本の電気刺激誘発性収縮試験)およびin vivo(髄腔内投与による鎮痛効果)においてメチオニンエンケファリンの効果を増強することを明らかにした。また、[D-Ala2, N-Me-Phe4, Gly5-ol]-Enkephalin (DAMGO)を用いてミューオピオイド受容体に対する結合親和性などの解析結果から、シアロルフィンはオルソステリックリガンドの受容体結合には影響せず、効力(efficacy)を増強することを明らかにした。すなわち、シアロルフィンがオピオイドペプチド分解酵素の内在性阻害物質と同時に、ミューオピオイド受容体の内因性ポジティブアロステリックモジュレーターとして内因性エンケファリンのオピオイド受容体への効力を増強することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シアロルフィンがin vitro (マウス輸精管摘出標本の電気刺激誘発性収縮試験)およびin vivo(髄腔内投与による鎮痛効果)においてメチオニンエンケファリンの効果を増強すること、[D-Ala2, N-Me-Phe4, Gly5-ol]-Enkephalin (DAMGO)を用いてμ受容体に対する結合親和性解析から、オルソステリックリガンドの受容体結合には影響せず、効力(efficacy)を増強することを明らかにした。これらの成果により、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛モデルを用いて、1) シアロルフィンの鎮痛効果、2)ラット顎下腺、脊髄後角の組織中のシアロルフィンおよび内因性オピオイドペプチド量、3)脊髄、顎下腺、脳におけるペプチド分解酵素(NEP,APN, DPP)、オピオイドペプチド(Preproenkephalin, Preprodynorphin, proopiomelanocortin)、シアロルフィン(Vcsa 1)発現量の変化を免疫組織化学的、In situ hybridization(ISH)法で定性解析するとともに、各組織における各種タンパク質、遺伝子発現をWestern blot (WB)法、qRT-PCR法にて解析する予定である。また、シアロルフィンによる内因性オピオイドペプチド分解阻害をダイナミックに測定するため、正常ラットあるいは神経障害性疼痛モデルを用いてマイクロダイアリシス灌流液中にシアロルフィンあるいはペプチド分解酵素阻害剤(アマスタチン、カプトプリル、ホスホラミドン)を添加した場合のオピオイドペプチド濃度変化について検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に慢性疼痛モデルによるシアロルフィンの疼痛に対する作用について解析する予定であったが、計画を変更し健常動物を使用したため、未使用額が生じた。2019年度は慢性疼痛モデルとして神経障害性疼痛モデルとともホルマリン慢性疼痛モデルを用いてシアロルフィンの慢性疼痛に対する作用などを検討する予定である。
|