志賀毒素産生菌によって引き起こされる溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS)は、血小板減少、微小血管障害性溶血性貧血、急性腎障害を特徴とする。我々は、補体活性化のマンノース結合レクチン(MBL)がヒトSTEC-HUSに重要な役割を果たしていると仮説を立てた。志賀毒素2(Stx-2)をマウスに投与すると糸球体にフィブリン沈着が起こり、抗MBL-2抗体3F8を注射するとフィブリン沈着が阻止されることを以前に示した。本モデルの糸球体における血小板血栓の存在の変化については明らかにされていなかった。血小板血栓症のマーカーに対する3F8の効果を調べるために、ヒトMBLをノックインしたマウスを用いたSTEC-HUSモデルの腎切片を用いた。対照群のマウスにはPBSを、第2群のマウスにはStx-2を、第3群のマウスには3F8とStx-2を投与した。蛍光二重免疫法とデジタル画像解析を用いて、腎臓切片をフィブリンまたはフィブリノーゲンとCD41(血小板のマーカー)、von-Willebrand因子(内皮細胞と血小板のマーカー)、ポドシン(ポドサイトのマーカー)で染色した。マウスとヒトのSTEC-HUSの超薄切片に電子顕微鏡(EM)を行った。Stx-2の投与は糸球体中のフィブリンと血小板の増加をもたらしたが、3F8とStx-2の投与は血小板とフィブリンをコントロールレベルまで減少させた。電子顕微鏡により、免疫染色で観察されたCD41陽性の構造が血小板であることが確認された。これらの所見は、ヒトSTEC-HUSにおける補体レクチン経路の活性化を示唆するものであると考えられる。次に志賀毒素が尿細管に及ぼす影響について調べた。Stx群では尿細管障害のマーカーであるNGALの上昇を認めた。また組織学的には近位尿細管の脱落を認めた。Stx-2を投与されたマウスでは尿細管機能および組織に障害が認められた。
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