研究課題/領域番号 |
18K08872
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
神谷 真子 朝日大学, 経営学部, 准教授 (80181907)
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研究分担者 |
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
智原 栄一 朝日大学, 歯学部, 教授 (80244581)
村松 泰徳 朝日大学, 歯学部, 教授 (30247556)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70533446)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
梅村 直己 朝日大学, 歯学部, 講師 (80609107)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミダゾラム / IL-10 / IL-2 / IFN-γ / 遺伝子発現 / ガン組織微小環境 |
研究実績の概要 |
2018年度は、臨床で頻用されるmidazolam、propofol および局所麻酔薬として併用されることの多いlidocaineが免疫細胞に及ぼす影響を、マウス脾細胞の刺激培養系を用いて検討し、以下の結果を得た。 1)lidocaineやpropofolは100μg/ml未満の濃度、一方、midazolamは10μg/ml未満の低濃度領域においては、刺激脾細胞に対する細胞傷害性は認められなかった。 2)lidocaineは少なくとも 80μg/ml以下で、propofolは少なくとも10μg/ml以下では刺激脾細胞のIFN-γおよびIL-10の産生能を抑制しなかった。一方、10μg/ml のmidazolamは、IFN-γおよびIL-10の産生能を顕著に抑制した。 3)5μg/mlの midazolamは、刺激脾細胞のIl-2、Il-10および Il-4 mRNA発現を、刺激後3時間、1日および2日以降において有意に抑制した。5μg/mlの midazolamは、刺激脾細胞のIL-2、IL-4および IL-10産生をそれぞれのmRNA発現と同様の様式で顕著に抑制した。一方、刺激脾細胞のIl-6およびIfn-γmRNA発現や、タンパク質産生量には、5μg/mlのmidazolam存在下で有意な変化はみられなかった。 4) 各種の口腔扁平上皮癌細胞株や間質細胞10T1//2を用いて上記麻酔薬の細胞傷害性を観察したところ、脾細胞と比較してより高濃度領域でのみ細胞毒性が認められた。 以上の結果から、脾細胞は各種麻酔薬に対する感受性が高く、特にmidazolamは、臨床的濃度に近い低濃度でも、刺激脾細胞のIL-2、IL-4およびIL-10の発現を転写レベルのみならずタンパク質レベルでも特異的に抑制し、それらサイトカインを介してT細胞系の免疫活性化機構に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、口腔がんや間質細胞などに与える麻酔薬の影響をも検討する予定であった。しかし、現在これらの細胞株については麻酔薬の細胞障害性を明らかにできたのみで、細胞機能への影響の解析は未着手である。 遅れを生じた理由は、脾細胞の機能解析をより詳細に行ったためである。計画ではIFN-γとIL-10のみをを指標として評価する予定であったが、各麻酔薬の特徴をより明確にするために、IL-6、IL-4、IL-2など調査の対象を広げたために、想定以上に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度未着手であった口腔扁平上皮癌(OSCC)と間質細胞(10T1/2)の機能に対する麻酔薬の影響の検討から開始する。具体的にはOSCC-10T1/2-脾細胞の混合培養系に各種の麻酔薬を添加し、OSCC あるいは10T1/2 の形質(①IL1-α、Ccl2、Ccl7 やIL-6 の遺伝子発現、②各種液性因子の分泌動態、麻酔薬の投与に伴う宿主免疫病態の変化③増殖能、④遊走能など)に与える影響を解析する。 一方、担癌動物モデルを用いて麻酔薬の投与に伴う宿主免疫病態の変化についての検討も併せて進める。すなわち、OSCCを皮下移植したマウスに麻酔処置を麻酔薬の種類、投与期間、頻度などを変えておこない、宿主免疫病態の変化を観察する。検討項目としては、①免疫担当細胞 (Tリンパ球亜集団、MDSCなどの構成比とその活性化、②末梢血サイトカイン濃度、③脾細胞のサイトカイン産生能にあたえる影響などを設定し、FACSあるいはELISA法により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者髙山が購入を予定していた試薬の納品がおくれ、2018年度内での入手が困難となったためである。5月までには入手できる見込みである。
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