研究課題
我々は2020年度までに、一連の鎮静薬・麻酔薬の中でも特にミダゾラムが、免疫担当細胞である脾細胞に直接あるいは間質細胞を介して作用し、脾細胞のTh1サイトカイン(IFN-γ)の産生能を温存する一方でTh2サイトカイン(IL-10)産生能のみを阻害することを明らかにし、宿主の免疫応答をTh1型にシフトさせている可能性を指摘した(JOB投稿準備中)。本年度は、ミダゾラムの作用の可逆性および関連する受容体を検討するため、ミダゾラム投与のタイミングおよびベンゾジアゼピン(BZP)受容体拮抗薬の添加がマウス脾細胞のIL-10産生に与える影響を観察するとともに、Ca2+チャンネルを介した作用が報告されているアルテピリンCの効果と比較した。共培養系にミダゾラムを添加する代わりに、ミダゾラム(5μg/mL)で前処置された脾細胞を用いて刺激培養を行った場合、前処置なしの脾細胞とほぼ同程度のIL-10産生能を有していた。さらに、脾細胞は共培養開始後6時間まではミダゾラム共存下でも、対照群と同等のIL-10産生能を維持し、それ以上長時間ミダゾラムにさらされることによりIL-10の産生能が低下した。また、中枢型BZP受容体拮抗薬(フルマゼニル)および末梢型BZP受容体拮抗薬(PK11195)を0~75μMの範囲で共培養系に添加しても、ミダゾラムのIL-10産生抑制効果を阻害できなかった。これに対し、アルテピリンCは脾細胞のIL-10産生能を温存するほか、IL-2の産生を強く促進する一方で、IFN-γ産生能を低下させるなど、ミダゾラムとは全く異なる調節作用を示した。以上の結果から、1)ミダゾラムのIL-10産生抑制効果は可逆的で刺激培養の早期までに本薬剤を除去することでその抑制効果の顕在化を防ぐことができること、2)ミダゾラムの作用はBZP受容体やアルテピリンCが関与するようなCa2+チャンネルを介したものではない可能性が指摘できた。
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