研究実績の概要 |
急性呼吸窮迫症候群の治療薬候補として本邦でも臨床治験が行われているinterferonβ-1a(INFβ-1a)の細胞間バリア機能への影響をINFβ-1aシグナル伝達,肺内酸素分圧・サイトカイン環境と関連付けた転写因子hypoxia-inducible factor 1活性化とのクロストークの観点で解明することが本研究の目的である。この目的の達成のため血管内皮初代培養細胞,肺胞上皮・腸管上皮由来細胞株を用いて細胞外ドメインがEcto-5'-nucleotidaseを持つCD73分子の発現とそれに依存した細胞間バリア機能維持のメカニズムを細胞生物学・分子生物学・バイオインフォマティクスを統合した手法を用いての解明を試みた。 今年度は昨年度の成果を受けて以下の研究成果を得たので報告する。 ヒト臍帯静脈内皮細胞、ヒト肺微小血管内皮細胞を用いた構築した血管内皮バリアモデルを用いてLPSがバリア機能を阻害すること、その阻害がINFβ-1aにより軽減されるという実験結果を得た。この機序として昨年までの研究でタイトジャンクションを構成するZO-1, Claudin5, Occuludin, VE-cadherinのmRNA、蛋白質発現の変化が基盤にある事が判明していた。今年度はこの分子の細胞内局在を詳細に検討してINFβ-1a処理によりこれらの分子が細胞質から細胞膜へのトランスロケーションする事を見いだした。またsiRNAを用いた機能阻害実験の結果などからこの過程にCD73分子の存在が必要である事が強く示唆された。 以上の検討結果から、CD73分子の発現とそれに依存した細胞間バリア機能維持のメカニズムがINFβ-1aによるバリア機能の強化で重要な役割を果たしていることがほぼ示された。
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