研究課題/領域番号 |
18K08878
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
川口 慎憲 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 麻酔科, 助教 (60614633)
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研究分担者 |
池田 健彦 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 手術部, 准教授 (10262817)
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 准教授 (10505267)
遠藤 昌吾 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (60192514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ERK / 炎症性疼痛 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
細胞外シグナル伝達キナーゼ(ERK)5はMAPKファミリーに属するセリン・スレオニンキナーゼである。ERK1/2は疼痛シグナルの伝導メカニズムにおいて重要な役割を担っていることが明らかになりつつあるが、ERK5の役割については不明な点が多い。初年度は中枢神経特異的にERK5遺伝子を標的遺伝子欠損したマウスを作出し、疼痛シグナル伝達におけるERK5の役割を解析した。中枢神経特異的ERK5標的遺伝子欠損マウス(ERK5CKOマウス)はERK5 floxマウスとnestin-Creトランスジェニックマウスとの掛け合わせにより作出した。神経障害性疼痛は坐骨神経部分結紮モデルを用い、アロディニア及び痛覚過敏はそれぞれvon Frey testとPlantar testで評価した。炎症性疼痛はFormalin testで評価した。統計解析はtwo-way repeated ANOVAを用いて、p<0.05で有意差ありとした。Formalin testでは対照群(n=10)と比較してERK5CKOマウス (n=10)では第2相反応の有意な低下がみられた。von Frey test及びPlantar testでは対照群(n=8)と比較してERK5CKOマウス(n=8)では有意な差は見られなかった。以上の結果より、中枢神経のERK5は神経障害性疼痛の発症には関与していなかったが、炎症性疼痛において大きな役割を果たしていることが示された。脊髄のERK2に関しては我々の以前の報告により、炎症性痛と神経障害性痛の両方に関係していることがわかっている(Otsubo et al., PAIN 2012)。このことからERK2とERK5では痛みシグナルの制御において役割が違うことが示唆された。また、ERK5CKOマウスにおいて、阻害薬を用いてERK1,2の活性を阻害するとホルマリンテストにおける第2相反応がさらに抑制されることからも、炎症性痛におけるERK1,2とERK5の役割は違うことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、神経因性疼痛におけるERKシグナル経路制御メカニズムの全体像を明らかにするため、ERK1、ERK2、ERK5、及びERK経路の上流に位置する線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR)基質2(FRS2)の標的遺伝子欠損マウスを用いて解析を行うことにしている。現時点ではFRS2標的遺伝子欠損マウス以外の各種マウスにおける行動額的解析はほぼ終了した。しかしながら、どのようなメカニズムで痛みシグナルを制御しているのか、さらに分子レベルで解析する必要がある。この点については、当初予期していなかったことであるが、ERKシグナル経路がサイトカインとの制御に関連していることを偶然発見した。現在、この点に重点をおいて解析している。
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今後の研究の推進方策 |
ERKシグナル経路制御メカニズムの全体像を明らかにするため、今後は主に分子生物学的および、生化学的手法を用いて分子レベルでのメカニズムを解析していく。特に、ERKシグナル経路とサイトカイン制御の関係は偶然発見したものであるが、疼痛シグナル研究における重要なブレイクスルーとなる可能性があり、本研究に加えることとした。また、当初の予定通り、神経因性疼痛モデルマウスの脊髄やDRGにおける遺伝子発現やタンパク活性化の違いを、DNAチップ、ウェスタンブロット法などを用いて解析する。これらの結果を初年度に得られた行動実験の結果と統合し、本研究課題の目的を達成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は行動学的実験を中心に行ったため、マウス管理のための実験補助の人件費が主体となった。次年度以降は生化学、分子生物学的研究が主体となるため、抗体購入などの費用にあてる予定である。
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