研究課題/領域番号 |
18K08879
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岡田 基 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80431427)
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研究分担者 |
藤田 智 旭川医科大学, 医学部, 名誉教授 (10173428)
井尻 えり子 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (40646072)
川口 哲 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60814217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 / β3受容体 / NO産生 / 心筋代謝 |
研究実績の概要 |
敗血症は感染症を契機とした全身の臓器障害である。敗血症性心筋傷害は可逆的変化とされているが、心不全を契機に多臓器障害を来し、予後不良となる。この敗血症に起因する心機能低下の発症メカニズムは十分解明されておらず、適切な治療戦が立てられないのが現状である。 我々は、敗血症による心機能低下のひとつのモデルとして、エンドトキシンであるリポポリサッカライド(LPS)誘発モデルを作成した。LPS腹腔内投与モデルマウスは、6時間後には全周性の壁運動低下を来し、24時間後には90%が死亡した。本モデルの心筋には、正常心筋には通常認めないβ3受容体が高発現していた。β3アンタゴニストを投与したところ、心機能は改善し、生命予後も大幅に改善することが判明した。心筋サンプルを用い検討したところ、LPSで枯渇した心筋のATP産生量が改善することが分かった。また、心筋脂肪酸代謝を検討したところ、脂肪酸の心筋細胞内への輸送(取り込み)には変化がなかったが、ミトコンドリア内への輸送が傷害されていることが判明した。心筋脂肪染色では、LPSでの脂肪沈着は、β3アンタゴニストで軽快し、β3アゴニストで増悪した。LPS投与心筋を3D電子顕微鏡で観察したところ、ミトコンドリア形態の維持と周囲の小胞体構造の破壊を認め、輸送経路の異常を強く示唆する結果となった。 さらに、β3受容体の抑制は、NF-kBを介するIL-6などのサイトカイン産生を抑制し、iNOSの誘導も抑制したが、NO総産生量には変化がなく、別のNO産生経路が存在することが示唆された。また、心筋エネルギーの産生は虚血性心不全では糖代謝へと変化するが、LPSモデルでは糖代謝経路も抑制されていることが判明した。このように、敗血症でのメタボリックシフトの異常が心機能低下に関与することが示唆された。この心筋代謝への介入は敗血症性心不全治療の糸口になる可能性がある。
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