主に出血性ショックの蘇生に用いられるResuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta(REBOA)は、大動脈をバルーン遮断することで遠位血管の出血を制御すると同時に、冠動脈や脳血管といった中枢部分の昇圧効果をもたらす。後者の生理学的変化から、非出血性心停止症例に対して、CPRにREBOAを組み合わせることで、心拍再開率や神経学的転帰が改善する可能性がある。これまでに非出血性心停止におけるREBOAを用いた蘇生時の循環動態について、いくつかの動物モデルでの研究が行われてきたが、多くは動静脈圧測定による間接的な評価にとどまる。本研究では、非出血性心停止に対してREBOAを用いて蘇生を行う時の循環動態を可視化することを目的とし、動静脈圧測定に加えて造影CTを用いた動物実験を行った。 まず予備実験として、心停止させる前の健康なブタで、下行大動脈に留置したREBOAのバルーン注入容量を0,20,40,60,80,100%(大腿動脈圧が消失するときの注入容量を100%と定義)と上げていき、それぞれの遮断強度において頚部の4D-CTを撮像し、左右頚動静脈のTime density curve(経時的な造影剤によるCT値の変化曲線)を解析した。 次に、非出血性心停止モデルとして、テンポラリーペースメーカーで心室細動を惹起するモデルを作成した。通常の蘇生方法(機械的胸骨圧迫と人工呼吸、アドレナリン投与、除細動)を行う群と、それに加えてREBOAで下行大動脈遮断する群に分け、それぞれにおいて蘇生中の動静脈圧測定と、頚部~大動脈弓部までの造影CTを撮像し、左右頚動静脈のTime density curveを解析した。 データ収集のための実験は全て終了しており、現在データの解析および論文の執筆を行っている。解析過程で一部のデータは既に学会発表している。
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