研究実績の概要 |
腸管虚血再灌流障害は、多臓器障害を引き起こすことが知られており、そのメカニズムの1つとして腸間膜リンパ液中の生物活性や炎症性メディエータが関与すると考えられている。われわれの過去の研究にて、腸間膜リンパ液には脂質のメディエータ(Lysophosphatidylcholines (LPCs)やアラキドン酸など)やエクソソームを含有することが明らかになっているが、腸管虚血再灌流障害における腸間膜リンパ液中のエクソソームに含有される脂質のメディエータの詳細は未だ明らかになっていない。そこで今回、腸管虚血再灌流障害モデルを作成し腸間膜リンパ液中のエクソソーム画分を抽出し、生物活性測定や質量分析をおこなった結果、腸間膜リンパ液中のエクソソームは、生物活性 (NF-κB活性) を有し、脂質のメディエータである不飽和脂肪酸含有(C18:2, C20:4)含有LPCを有することが明らかとなり、それらの成果は、国際学会で発表や論文報告 (J Traum Acute Care surgery, 2020)をおこなった。さらに、頸部迷走神経の電気的刺激は抗炎症作用を有するため、迷走神経刺激による腸間膜リンパ液中の抗炎症作用を脂質のメディエータの観点から調べたところ、迷走神経刺激は脂質のメディエータであるアラキドン酸の産生を制御することが明らかとなり、その成果は国際学会にて報告を行った。腸間膜リンパ液中のエクソソーム画分におけるアラキドン酸をはじめとした遊離脂肪酸の測定は現在、精度の問題から行えていないため今後の課題となっている。
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