近年地球温暖化は文字通り地球的な規模で大きな問題になっている。本邦でも熱中症患者は年々増加しており、臨床で重症症例に遭遇することも少なくない。しかし、その治療法は対症療法がほとんどであり、根本的な治療法がないまま臓器不全などに対応していることがほとんどである。 熱中症において重症症例はショックに陥ることが知られているが、この病態は敗血症によって引き起こされるショックの病態に酷似しており、炎症反応を制御することは治療法につながると予想した。 我々はラットにおいて熱中症モデルを一定の高温高湿な環境を作り出すことで確立し、敗血症における炎症反応を抑制することで効果を発揮するαアゴニストとして集中治療室でよく用いられるデクスメデトミジンが熱中症においても炎症性サイトカインの上昇を防ぐことを見出した。さらにこの抗炎症作用は血管内皮グリコカリックスの障害を抑制することで発揮されることを示した。 ショックでは循環不全により組織への酸素の供給が障害されるが、熱中症ではさらに酸化ストレスと炎症反応により血管内皮損傷が起こることが知られている。水素ガスは強力な還元作用で抗炎症作用を発揮する。水素ガスは近年蘇生分野で研究が目覚ましく、我々は水素ガスの効果に着目し、濃度を変えて水素ガスを熱中症モデルに適用し、その効果を調べた。 その結果、水素ガスは熱中症の死亡率を有意に改善し、その効果は2%の吸入が最も高かった。さらにバイオマーカーはSOD活性の上昇とともにグリコカリックスの構成成分であるシンデカン-1およびTNFαの低下を示したことから2&水素ガスは抗酸化作用および抗炎症作用を示すことで熱中症における血管内皮損傷を軽減したと結論した。
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