研究課題/領域番号 |
18K08890
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
一二三 亨 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 副医長 (30383756)
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研究分担者 |
山本 明彦 国立感染症研究所, バイオセーフティ管理室, 主任研究官 (30142144) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血清療法 / ヤマカガシ咬傷 / トロンボモジュリン / 凝固障害 / 抗毒素 / 蛇咬傷 |
研究実績の概要 |
我々が作成したヤマカガシ毒素によるラットDICモデルで、毒素投与後に治療開始時間を変化させてリコンビナントトロンボモジュリンα薬(rTM)を投与することでDICによる死の転帰の救命可能かどうかを経時的に採血して血液内の凝固因子の動態を調べた。その際ヤマカガシ抗毒素を治療薬の陽性対照とした。ラットDIC発症モデルでは、1)毒素投与後48時間以内にラットは死亡する。2)不可逆的な血尿及び溶血が観察され、3)血小板数が減少し、4)血漿中のプロトロンビン時間(PT)の延長が起き毒素投与2時間後に測定不能となり、5)フィブリノゲン(FIB)濃度が不可逆的に減少して測定不能となる。6)毒素投与2時間後をピークとしたDダイマーの一過性の上昇が認められる。これに対して、陽性対象のヤマカガシ抗毒素による治療を行うと、6)のDダイマーの一過性の上昇は同様に認められるが、1)から5)までの現象はすべて回復しラットは救命される。これに対して、rTMの治療効果は、13匹に投与して8匹で完全治癒となった(61.5%の治癒率)。その内訳は、毒素投与後の時間に影響され、rTMの投与時間によって異なった成績が得られている。毒素投与後短時間での投与により治療効果が得られる傾向があるが、各群の動物数を少なくとも5匹まで増やした成績を統計解析することで投与時間と治療効果の関係は明らかになると考えられる。一方、凝固因子等の動態を解析すると完全治癒となったラットでは、1)から6)のすべての指標が改善されて正常値に回復している。ヤマカガシ抗毒素と明らかに異なる現象として、Dダイマーの一過性の上昇のピーク値が、1/10から1/100まで抑制される点である。 さらに、我々が開発に成功したヤマカガシ毒素を用いるラットDICモデルの性状をToxinsで報告した(2021 18;13(2):160.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヤマカガシラットDICモデルの作成に成功し、トロンボモジュリン投与による効果の一部を確認した。ただし、その効果の機序を解明するまでにはいたっていない。その原因の1つとして昨年度の新型コロナ感染症蔓延による在宅勤務や動物実験規制が響いて、ラットDICモデルによるリコンビナントトロンボモジュリンの治療効果実験が予定通りに進められなかった。そのため、今後はヤマカガシ咬傷による凝固障害に対してトロンボモジュリンの有効性の病態を明らかにして、ヤマカガシ抗毒素の代替薬をさらに詰めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヤマカガシラットDICモデルの作成に成功し、トロンボモジュリン投与による効果の一部を確認した。ただし、その効果に伴う病態整理は不明であり、これまで得られたin vivoラットDICモデルでのリコンビナントトロンボモジュリンの治療効果結果について、in vitroの実験系として、ヒト血漿を用いた①凝固系実験系及び②線溶系実験系にトロンボモジュリンの特異抑制薬である1)アンチトロンビン、2)carboxy peptidase inhibitorを添加した実験を行う。これによってリコンビナントトロンボモジュリンがどのように治療効果を発揮するのかが解明される。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで得られたin vivoラットDICモデルでのリコンビナントトロンボモジュリンの治療効果結果について、in vitroの実験系として、ヒト血漿を用いた①凝固系実験系及び②線溶系実験系にトロンボモジュリンの特異抑制薬である1)アンチトロンビン、2)carboxy peptidase inhibitorを添加した実験を行うため。
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