研究課題/領域番号 |
18K08898
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
小野川 傑 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (90224287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 敗血症 / IL6 signaling / 肺障害 / 低体温 |
研究実績の概要 |
Trans-signalingと呼ばれる血中可溶性IL6レセプター(sIL6R)を介したIL6 signalingを利用した臓器保護の可能性を検討する目的で、今年度はsIL6Rを敗血症マウスに接種し、各種試料を得た。また、昨年度試料回収で止まっていた血液試料の測定も実施した。 マウスに盲腸結紮穿孔(CLP)後3時間でsIL6Rを腹腔内接種(IL6R群)し、CLP後24、48時間での体温測定、採血、および肺を摘出し左側をホモジナイズ、右側をホルマリン固定した。 CLP後24時間の体温は対照群では35.2℃(中央値)で35℃以下が37%、gp130群では33.3℃で35℃以下が39%であったのに対して、IL6R群では36.6℃で35℃以下が0%であった。これにより、IL6R投与で復温が可能なことが明らかになった。 血液は遠心分離後、組織傷害の指標となるLDを測定した。術前では235 U/LであったがCLP後24時間で対照群が1001.5 U/L、gp130群が1341 U/Lと4-5倍高値を示したのに対して、IL6R群では358 U/Lと他群と比べて有意に低く、組織傷害の規模が他よりも小さい可能性が推測された。また肺ホモジネート液中のMMP-9はCLP後24時間で対照群とgp130群は400 ng/mL以上であったの対して、IL6R群は約270 ng/mLとやはり低かった。昨年度のgp130群の肺組織の免疫染色にてMMP-9陽性細胞が間質部分に多数浸潤していた結果を得ているが、IL6R群に対して未だ免疫染色を実施していないものの、浸潤細胞が少ないことが予想された。 以上のことから、CLP後のIL6R投与によりIL6 signalingの促進を試みた結果、復温が認められ、また臓器障害の程度も対照群やgp130群と比較して軽度になる可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度回収したものの測定していない試料の測定ならびに解析を、今年度の試料と一緒に実施している。測定項目ごとの試料の希釈条件決めに時間と費用がかかったため、予定より解析が遅れている。またIL6R群の肺組織の免疫染色も滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症マウスにおいてIL6 trans-signalingを促進することにより組織保護の可能性が見えてきた。現在測定を終えていない評価項目について、回収済み試料を用いて引き続き測定を進め、臓器保護の可能性について検討していく。今後、IL6 signalingを阻害するgp130群の結果と比較していくことで、敗血症侵襲下でのIL6 signalingの意義を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予定より遅れている関係で、消耗品のうち未購入の物品がある。次年度、引き続き遅れている実験を継続することから、次年度予算と合わせて使用予定である。
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