研究課題/領域番号 |
18K08898
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
小野川 傑 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (90224287)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 敗血症 / IL6 signaling / 肺障害 / 低体温 |
研究実績の概要 |
Trans-signalingと呼ばれる血中可溶性IL6レセプター(sIL6R)を介したIL6 signalingを利用した臓器保護の可能性を検討する目的で、今年度はこれまで試料採取して保管されている検体の解析を中心に、敗血症における低体温下での免疫機能の変化について解析した。 盲腸結紮穿孔(CLP)後の肺ホモジネート液を用いた抗体アレイの結果、低体温を示した個体ではG-CSFシグナルが高かったことを受け、今回G-CSF量をELISAで定量した。その結果、肺ホモジネート液中のG-CSF量はCLP後24時間をピークとする動態を示し、CLP48時間後にはCLP前と同じレベルに戻っている個体も散見した。低体温でG-CSFが高値の個体の肺組織をHE染色で確認したところ、広範囲のうっ血を認めた。さらにG-CSF高値で低体温を示した場合、LDやSurfactant-Dが有意に高値を示した。そこでこれら因子のうち低体温と関連を示すのがあるか検索したところ、G-CSFとLDであることが明らかになった。 以上のことから、低体温は組織障害を悪化させるため、早期に復温することが求められることが示唆された。昨年度、CLP個体へのIL6R投与が復温を促すことを明らかにしていることから、IL6R投与後の個体の解析を引き続き実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CLP後に回収した被検試料の解析に必要な測定試薬の入手に時間がかかっている。また今年度は新型コロナ感染症の感染拡大の影響により、教育エフォートが非常に高くなった。これにより研究時間を確保するのが困難であったのも一因である。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症モデルマウスにおける低体温と臓器障害の関係性が明らかになりつつある。CLP後に低体温を示した個体は、可溶性IL6Rを介したIL6 trans-signalingにより復温できることを明らかにしたことで、次年度において復温後の臓器障害に関与する因子の変化を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、新たに実験を進めることが難しくなったため、これまでに採取済みの試料の解析を中心とした実験を行った。このため、既に入手済みの試薬を使用して研究を進めたことにより、新たな試薬の購入を控えたため、次年度使用額が発生した。次年度においては、今年度の結果を踏まえて新たに解析が必要な項目があるため、これらの解析に必要な試薬等に計画的に使用する予定にしている。
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