血中可溶性IL-6レセプター(sIL6R)を介したIL6 signalingを利用した臓器保護の可能性を検討する目的で、盲腸結紮穿孔(CLP)マウスを用いて敗血症侵襲下でのIL6 signalingの有用性について検討してきた。 敗血症での低体温は予後不良であることはよく知られている。CLPマウスでも術後24時間で約40%が35℃以下であった。生理的に生じるIL6 signalingを遮断する目的でのrecombinant gp130 Fc chimera proteinの投与(gp130群)は、CLP群よりも中等度低体温の割合が増加した。このことから敗血症侵襲下でIL6 signalingが体温維持に重要であることが推測された。以前よりsIL6Rが術後まもなく血中から減少することを掴んでいたことから、recombinant IL6Rの投与(IL6R群)で復温が可能ではないかと考え、試みたところ、予想通り低体温を示す個体を認めなかった。よって、侵襲後のsIL6Rの減少時期にIL6Rを補うことにより、その後の状態を変えられることが示唆された。 そこでCLP後の臓器障害について検討した。術後24時間のLDは術前と比べCLP群で4.2倍、gp130群で5.7倍増に対して、IL6R群では1.5倍増に抑えられた。肺障害ではSurfactant protein-DとMMP-9はIL6R群が最も低値を示した。 sIL6Rは術後3時間以降低下することから、急激な侵襲での血管透過性亢進による漏出を疑い、血中と肺のIL6R量を比較した。術後3時間以降血中IL6R量は急減した一方、肺では増加した。血管透過性亢進の指標としての血中アルブミンはgp130群が低値、IL6R群が高値で推移した。 以上より敗血症侵襲下のIL6 signalingは体温維持、それに付随した間接的な臓器保護の役割が示唆された。
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