研究課題/領域番号 |
18K08902
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
岩田 充永 藤田医科大学, 医学部, 教授 (10799464)
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研究分担者 |
八谷 寛 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30324437)
寺澤 晃彦 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30399597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高感度トロポニン / 非ST上昇心筋梗塞 / 診断精度 / システマティックレビュー |
研究実績の概要 |
システマティックレビューについてはPROSPEROに登録し、BMJ Open誌に掲載されたプロトコールに従い、2006年1月から2021年11月の間に全世界で発表された研究を電子データベースで検索した。救急外来でNSTEMIが疑われる患者に高感度トロポニン(hscTn)検査を使用し、診断精度を評価した研究を採用した。欧米、アセアニアを主体とした虚血性心疾患専門の研究センターから発表された88件の研究が適格であった。アボット社(43/88)とロシュ社(53/88)による検査室ベースのhs-cTnアッセイが大多数で採用されていた。83件の研究(94%)ではデータは前向きに収集されたが、うち52件の研究(59%)で血液サンプルの欠落または最終診断の欠如等で適格者の1%~90%が解析から除外されていた。異なるアッセイ間で精度を直接比較したのは13件の研究(15%)のみだった。除外された適格患者の割合は多様であり、研究結果を実施診療に直接適用する懸念が示唆された。 当施設で実施した一次研究については非ST上昇心筋梗塞(NSTEMI)が疑われる754人(NSTEMIの有病率7.4%)に対しEHAの提唱する0h/1hアルゴリズムを実施、カルテ記載内容に基づく簡易データに基づくナイーブな横断的解析では感度および陰性予測率は100%であり、陽性予測率は37.1%、特異度は79.6%だった。しかし、心筋梗塞の診断について完全な参照基準が全員に実施されておらず、部分確認バイアス、分別確認バイアスがあり、算定された精度は過大評価が疑われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
システマティックレビューの結果についてはBMJ Open誌にて査読を受けた。文献検索の包括性、研究特性および患者特性の解析項目不足、一次研究のデザイン・解析法への批判的な論点が査読者から問題と指摘され、現在改訂推奨に基いて詳細な検索の追加とアップデート、必要項目のデータ抽出と再解析を行い、改訂を終了したところである。この大きな改定に伴い検査精度および予測精度自体の統合的解析に採用する一次研究のセットが保留となっており、後続するメタ解析など研究全体の進捗が遅れている状況である。 一次研究についてはデータ欠落と不完全な参照基準によるバイアスが問題であり、実臨床で検討可能なデータに改変すべく潜在クラスモデル分析(不完全参照基準の側面から対応)、逆確率補正(欠落データの側面から対応)を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
システマティックレビューについて、スコーピングレビュー部分は改訂したデータに基づき調整後再投稿の予定である。この結果に基づき定量的統合解析に組み入れる一次研究のデータセットを確定し、アッセイ別(Abbott; Roche; Siemens; Beckmann; POC各アッセイ)、採血プロトコル(0h/1h-, 0h/2h- , および0h/3h-プロトコール)、検査組み合わせ法(Rule-inまたはRule-out法)の3要素から群別化し、診断精度のネットワークメタ解析を実施して各個別方法の診断精度の違いを全体性の面から対応予定である。一次研究については潜在クラスモデル分析(不完全参照基準の側面から対応)、逆確率補正(欠落データの側面から対応)に加え、2020年3月末時点(最終患者組み入れ後2年間)のカルテ記載データを再レビューし、追跡法による経過観察データも加えた制度の補正も組み込み、ナイーブな横断的解析から生じる過大評価を定量的にも検討し、日本人患者のトリアージにも適応できるデータを報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際間共同研究を行っている英国エクセター大学Peninsula Technology Assessment Groupへの訪問は本年もCOVID-19感染症の蔓延で再延期となったため、関連する旅費予算が未執行の状態となっている。感染収束状況を適切に確認後、訪問を予定している。論文が査読後の改訂指示で遅延しているため出版費用が未施行のままとなっている。また、定量的解析の論文および一次研究の論文作成も遅延しており、校正費、投稿費、出版費が未施行となっている。2020年度論文化が完成次第順次使用予定である。
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