研究課題/領域番号 |
18K08906
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
高氏 修平 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20793897)
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研究分担者 |
上野 伸展 旭川医科大学, 医学部, 特任講師 (30436000)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロバイオティクス / 腸内細菌叢 / 敗血症 / Dysbiosis / 腸管バリア |
研究実績の概要 |
集中治療を必要とする重篤な敗血症患者では、抗菌薬の使用などから腸内細菌叢のバランスが崩れた状態(dysbiosis)となり、腸管バリア機能の破綻から腸管上皮の透過性亢進が起こることで最終的に臓器不全が進行することが示されている。現在、このような消化管障害の治療薬としてプロバイオティクス投与が試みられているが、腸内環境の悪化した状態では生菌であるプロバイオティクスは安定した治療効果を発揮できていない可能性がある。今回の研究では、プロバイオティクス由来の腸管バリア機能増強物質を用いて、腸管をターゲットとした新規敗血症治療薬の基盤的研究を行うことを目指している。今年度は敗血症モデルマウスとしてcecal ligation and puncture (CLP)モデルの作成、およびlipopolysaccharide(LPS)モデルの作成を行い、当研究室で同定された乳酸菌由来の腸管保護物質である長鎖ポリリン酸の投与によりマウス生存率に有意な差が見られるかについて実験を行った。また、このポリリン酸の投与前後で、腸内細菌叢に変化が見られるかについてterminal restriction fragment length polymorphism; T- RFLP法による菌叢解析を行った。現在までに、マウスの生存率を有意に改善させる効果は確認されていないが、今後、腸管バリア機能についての治療効果の検証や別のモデルの作成も含め、研究を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに敗血症モデルマウスを用いたin vivoでの実験を開始しており、当初の計画通り概ね順調に進展している。一方で、当初予定していた動物モデルではコントロールマウスとの間に有意な生存率の差が得られなかった。この理由としてCLPモデルは腹膜炎由来の敗血症モデルであり、腸管バリア機能の増強効果を実証するモデルとしては妥当ではなかった可能性が考えられた。このため、CLPモデル以外にLPSモデルや他のモデルを用いて同様の実験を行い、腸管バリア機能の増強作用について解析を行っている。また、T-RFLP法を用いて腸内細菌叢の解析を行い、正常マウスではプロバイオティクス由来ポリリン酸により4週後の菌叢が大きく変化することを明らかにした。現在、各種敗血症モデルにおいて、プロバイオティクス由来分子による菌叢変化を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はLPS投与モデルなどの別の敗血症モデルを用いて生命予後の延長効果を検討する。また並行して、T-RFLP法による腸内細菌叢の解析を進め、その結果をもとに16s rRNAメタゲノム解析による関連菌種の同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画通り、試薬購入および実験動物購入費用として使用したが、わずかに残額が生じた。 引き続き、敗血症モデル作成のための動物購入費用および試薬購入費用に使用する予定である。
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