当院へ救急搬送された院外心肺停止(CPA)症例において、当院到着後、心肺蘇生(CPR)を継続しながら直ちに採血を行い(院内でのエピネフリン投与前)、遠心分離後に血漿を-80℃で保存した。血漿中のカテコラミン(エピネフリン、ノルエピネフリン、ドパミン)およびバソプレシン濃度を、それぞれ高速液体クロマトグラフィーおよびラジオイムノアッセイを用いて測定した。対象を病院前でのエピネフリン投与量に基づいて、病院前投与なし群(Z群)、病院前エピネフリン1mg投与群(O群)および2mg投与群(T群)の3群に分け、3群間で上記の血中濃度を比較検討した。また、自己心拍再開(ROSC)率に関しても3群間で比較した。結果として、血中エピネフリン濃度は3群間に有意差がみられ、T群が最も高値だったが、血中ノルエピネフリン、ドパミンおよびバソプレシン濃度は3群間で有意差はなかった。一方、ROSC率は3群間に有意差はなかった。これらの結果から、病院前エピネフリン投与は、病着時の血中エピネフリン濃度に影響を与えたが、血中ノルエピネフリン、ドパミンおよびバソプレシン濃度には影響しなかった。また、血中エピネフリン濃度上昇が直ちにROSCに影響しない可能性が示唆された。 同じく当院へ救急搬送された院外心肺停止(CPA)で病院前にエピネフリン未投与の症例に関して、病着後、エピネフリン投与前に採血を行い上記と同様に血漿中のカテコラミンおよびバソプレシン濃度を測定し、対象をROSCの有無で2群に分け、血中カテコラミン濃度について2群間で比較検討した。その結果、来院時の血中エピネフリン濃度はROSC有群がROSC無群に比較して有意に低値だったが、その他のカテコラミンおよびバゾプレシンは2群間で有意差はなかった。この検討結果でも、血中エピネフリン濃度上昇が直ちにROSCに影響しない可能性が示唆された。
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