研究実績の概要 |
生体内のpHの調節は生命維持に不可欠な機能の一つであり、近年その変化を感知する受容体としてプロトン感知性G蛋白関連受容体(G protein-coupled receptor, GPCR)がいくつか同定された。いくつかの疾患でのその役割が明らかになりつつあるが、腎臓に関してはpH調節の中心臓器であるのにも関わらず、GPCRの役割は明らかでなかった。申請者はこれまでの研究で、腎障害モデルに肺障害を誘発する敗血症モデルを組み合わせることにより、特にGPCRの一種であるOGR1の遺伝子の有無により、生存率に差が生じる可能性を見い出した。これは実臨床において、敗血症で治療を受ける患者の予後が腎障害の有無により規定されるという知見と一致する。本研究課題では様々な肺腎障害モデルを駆使してGPCRが関与する生体内のpH調節の役割および予後に与えるメカニズムを解明することを目的とした。モデルとしては前述したLPSの腹腔投与による敗血症モデルの他、虚血再灌流モデル (IRI: Ischemic re-perfusion injury IRI)を用いた。マウスのバックグラウンドを合わせた上で、OGR1遺伝子の有無による組織学的分析、血液ガス分析および血中・肺胞液中のサイトカイン濃度の比較を行ったが、結論として両群に差を認めなかった。一方で、バックグラウンドの解析過程で、メタゲノム解析によりOGR1遺伝子の有無により両群の腸内細菌群に差が生じることが見いだされ、腸内環境の維持にpH感受性遺伝子として作用している可能性が新たに見いだされた。
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