研究実績の概要 |
敗血症は未だ致命率の高い病態の一つである. 網羅的な遺伝子多型解析により, 細胞外マトリックスタンパク質SVEP1が敗血症重症化因子として同定された. SVEP1は細胞間接着や胎生期のリンパ管形成に重要な機能を果たすことが明らかとなってきたが, 未だ機能の全容は解明されておらず, 敗血症における動態や機能はほとんど解明されていない. 本研究では敗血症におけるSVEP1の動的変化を明らかにすることを目的とした. 野生型C57BL/6マウスを用い, 手術なしモデル(no surgery: N.S.), 単開腹モデル(Sham), 腹腔内敗血症モデル(盲腸結紮穿孔, cecal ligation and puncture: CLP)を作成した. 各群におけるSVEP1の遺伝子発現(qRT-PCR法)やタンパク質量(Western-blot法), 肺における細胞ごとのSVEP1の動的変化(Flowcytometry)を比較した. 敗血症に関連する7つの重要臓器のスクリーニングでは, 肺でSVEP1の遺伝子発現とタンパク質産生が有意に高かった. 腹部切開後, 肺ではSVEP1の遺伝子発現と蛋白質産生が有意に減少し, さらに敗血症の刺激を受けると肺ではSVEP1の遺伝子発現と蛋白質産生が有意に減少した. フローサイトメトリー解析では, 敗血症マウスはShamモデルと比較して, 肺においてCD45.2high/SVEP1high細胞が有意に増加し, CD31high/SVEP1highおよびLYVE-1high/SVEP1highが減少した. 敗血症により, 肺でのSVEP1遺伝子発現やタンパク質量が減少した. 肺において敗血症の早期に, SVEP1を有する血管内皮細胞やリンパ管内皮細胞が減少し, SVEP1を有する血球系細胞が増加した.
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