研究課題/領域番号 |
18K08915
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小幡 由佳子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90432210)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 血管内皮傷害 / 高血糖 / 高酸素 / 灌流下培養 |
研究実績の概要 |
血管内皮は炎症や虚血再灌流障害の際に臓器と同様に重要な役割を果たし、様々なシグナル伝達を介してメディエータとして働いている。生体内では血管内に血液が流れることによりシェアーストレスがかかり、血管内皮細胞が様々な反応を起こしている。しかし今まで報告されている血管内皮細胞を用いた研究では静止モデルが使われており、実際に灌流した ものはほとんどない。我々は実際に培養開始時期から血管内皮細胞に対して灌流を行い、シェアーストレス下に生体内の血管内皮に類似した細胞を作成し、より生理的な条件下で臨床の場でよく見られる虚血再灌流や重症感染にともなう急性の高血糖と高酸素の合併ストレス状態を作成し、その時の内因性活性酸素種の定量や炎症に関連する内皮細胞機能の変化を検討することを目的とする。 細胞を灌流下で培養することにより、細胞の形態や機能に違いが起こることが知られている。我々は実際に血管内皮細胞に対して細胞培養開始時期から灌流を行うことで、より生理的条件下で培養細胞を完成させる予定である。これは実際の血管内皮に類似する構造や性質を持つと考えられ、更にこの細胞に灌流下で低酸素再酸素刺激または感染刺激を与えた後に高血糖、高酸素状態で灌流するモデルを作成しその時の内因性活性酸素種の定量、細胞内シグナルおよび細胞機能の変化、細胞障害作用を示すかどうかを検討する。 灌流下での血管内皮細胞培養モデルの作成が最初の目的となる。これまでに酸素濃度変更可能な培養庫を準備し、灌流用装置を作成し、最適な流量、培養日数、培養細胞数などを検討中である。 また現在までに静置培養した血管内皮に軽度の急性高血糖状態を作成し、正常血糖状態および無糖状態と比較しブラジキニンによるカルシウム応答が変化するか確認中であるが、統計処理可能なn数を得るには時間を要する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
灌流培養モデルの作成に時間を要し最適な流量、培養日数、培養細胞数などを検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は灌流培養モデルを完成させ、また同時に静置モデルでも実験を進めていく予定である。 1.灌流下培養血管内皮モデルを用い、低酸素再酸素化刺激を受けた血管内皮細胞に①急性高血糖状態②高酸素状態、のいずれか一方、または同時に両方の状態を作り後述の項目を測定し、通常血糖、通常酸素濃度の場合と比較する。 2.灌流下培養血管内皮 モデルを用い、リポポリサッカライドやインターロイキン、TNF-αなどによる炎症刺激を受けた血管内皮細胞に①急性高血糖状態②高酸素状態のいずれか一方、または同時に両方の状態を作り後述の項目を測定し、通常血糖、通常酸素濃度の場合と比較す る。 3.同様の状態を静置モデルでも作成し、灌流下モデルとの違いを調べ、シェアストレスの影響についても調査する。測定項目は1)活性酸素種の経時的変化、細胞障害(ネクローシス)の測定2,7-dichlorofluorescein diacetate (DCFH-DA) 、propid ium iodide (PI)の蛍光色素を還流液中に5microM/Lの濃度で投与し、蛍光顕微鏡でコンフリオン状態の細胞の蛍光強度の変化を経時的に測定する。2)細胞障害(アポトーシス)の検討:ミトコンドリアの膜電位はtetramethylrhodamine ethyl esters (T MRE)、細胞死(アポトーシス)の評価にAnnexin 5またはCaspaTagTM Pan-Caspase In Situ Assay Kit, Fluoresceinを蛍光顕微鏡で測定する。3)内皮細胞機能の評価:細胞内カルシウム濃度の変化(fura-2/AMの蛍光値の解析)、血管拡張性物質PGI2やNOの分泌反応性、細胞接着分子の発現量の変化などを測定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では既存の灌流モデル用を購入予定であったが、より安価で同様な培養環境を実現できる方法を模索しているところであり、実現可能な場合には余剰分は試薬や酸素ガスや窒素ガス、その他消耗品などに振り替えて使用する予定である。
|