研究実績の概要 |
今年度は、既存の症例において、発症(=神経症状出現)からの経過時刻を記録した臨床データベースを用いて、発症から72時間以内の採取時刻が特定できた保存血清を用いてサイトカインの測定を行った。今年度の補助金は主にこのサイトカイン測定費用に充てられた。対象は二相性脳症(AESD)3例、出血性ショック脳症(HSES)3例、熱性けいれん(FS)3例。FSはすべて集中治療を受けたが後遺症なしの症例であった。測定はBio-Plexマルチプレックスイムノアッセイ法で行った。 炎症性サイトカインの代表であるIL-6の結果を示す(単位は全てpg/ml)。発症後72時間以内の検体は9症例で35検体。IL-6のピーク値 (発症後時間)はHSESで3438 (10.3h), 2373 (13.7h), 36 (21.4h)、AESDで359 (4.5h), 154 (6.5h), 19 (2.2h)、FSで1972 (8.8h), 21 (6.3h), 6 (5.3h)であった。初回検体採取時間の平均はAESD群:2.3±1.3h, HSES群:13.6±7.7h, FS群:4.4±2.4h。 IL-6は初回検体の比較ではHSESが高い傾向だが(HSES:965±1240, AESD:91±136, FS:19±11)、発症後6±3hでは一定の傾向を認めず (HSES:485 n=1, AESD:257±144 n=2, FS:666±1130 n=3)、発症後24±4hではHSESが高い傾向であった(HSES:533±830 n=3, AESD:46 n=1, FS:16±0.4 n=2)。 炎症性サイトカインの上昇はHSESなどサイトカインストーム型の急性脳症に特徴的であるとされていたが、最終診断がAESD、FSの症例においても発症24時間以内にダイナミックに変化することが示された。
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