研究課題
今年度は、①難治性けいれん重積に関連することが多い、熱性けいれん、急性脳症症例のサイトカインプロファイルの経時的変化につき前方視的に収集した検体での評価を行った。集中治療を行い、経時的に複数ポイントでサイトカインを測定できた8例(AESD=3 HSES=3 CFS=2)において、発症72時間以内のサイトカイン値は IL-1b 0.25-107.76 pg/ml, IL-1RA; 405.61-78583.51 pg/ml, IL-6; 2.29-3438.74 pg/mlで、全てコントロール値より上昇していた。IL-1b、IL-6は24時間以内にピーク値をとり低下に転じており、昨年の後方視的研究の結果の再現性が確認された。②サイトカインストーム、組織での代謝不全が機序として考えられている、出血性ショック脳症症候群(HSES)について、サイトカイン、ケモカインに加え、ミトコンドリア病、敗血症などで病勢、予後マーカーとして優れた診断性能が報告されている炎症関連蛋白であるGrowth Differentiation Factor 15(GDF15)についても経時的な変化を探索した。多くのサイトカイン、ケモカイン、およびGDF-15のレベルは、HSES患者の方が最初の24時間で対照より統計的に有意に高かったが、IL-2およびIL-4のレベルは差がなかった。この研究によりHSESの病態生理に関する上記バイオマーカーの経時的変化を網羅的に始めて示した。またGDF-15についてはその著しい変化が捉えられ(45352 pg/ml (HSES) vs 271.5 pg/ml (control))、バイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。
3: やや遅れている
サイトカインの動態については概ね計画通りの進捗状況となり、さらにGDF-15が有力なマーカーとなることが示された。一方脂質メディエーターの動態については、試料の保存状態などの問題のため未だ十分な結果が得られていない。
次年度は、これまでの結果を元に、発熱に伴う難治性けいれん重積状態の後遺症を予測するclinical prediction ruleを作成し、治療効果判定マーカーとしての炎症メディエーターの有用性を評価する。
国際学会に参加しなかったため次年度使用額が生じた。次年度に国際学会に出席予定。
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