研究課題/領域番号 |
18K08919
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 裕子 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (80423284)
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研究分担者 |
森松 博史 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30379797)
井上 一由 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (10624413)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 救急医学 / 急性腎傷害 / 横紋筋融解症 / ヘムオキシゲナーゼー1 / 塩化スズ |
研究実績の概要 |
急性腎傷害は救急・集中治療現場で遭遇することの多い病態の一つだが、特に地震・災害時の横紋筋融解症に伴う急性腎不全では初期治療の遅れから致死的状態を招くことがある。横紋筋融解症後の腎傷害の誘因であるミオグロビン由来の遊離ヘムの増加に対し、腎に細胞保護作用を持つヘムオキシゲナーゼHeme Oxygenase (HO)-1が誘導されることがNathらにより報告されている。申請者らは、ヘムを感知してHO-1発現を制御する転写調節因子である Bach1の細胞内動態変化を本症においてin vivoで初めて示した。本研究では、ヘムの分解酵素であり、抗酸化作用・抗炎症作用・抗アポトーシス作用を有するHO-1発現誘導による、横紋筋融解症後腎傷害(RM-AKI)の新しい治療戦略を構築するために、2018年度は、腎特異的HO-1誘導剤である塩化スズの腎傷害に対する保護効果を確認した。 雄性Sprague-Dawleyラットを用い24時間絶飲後、50%グリセロール筋注により作成した横紋筋融解症後腎傷害モデル(RM・Glyモデル)に、腎特異的HO-1誘導剤塩化スズを投与し、SnCl2保護効果の程度を確認する。A) 腎特異的にHO-1を強誘導する塩化スズSnCl2または生理食塩水前投与後絶飲し、グリセロール筋注による横紋筋融解症後腎傷害モデルを作成した。またSnCl2投与による腎保護効果がHO-1発現によることを確認するため、B) HO-1阻害剤スズメゾポルフィリン(SnMP)投与実験も行い、腎機能を血液生化学検査、組織学的評価、HO-1の誘導を比較検討した。SnCl2投与による腎HO-1誘導はRM-AKIに対して血液生化学的にも組織学的にも保護的効果を示し、HO-1活性阻害剤であるSnMP投与によりそれが打ち消された。以上の結果よりSnCl2の前投与はRM-AKIに対して保護的効果があることが示さた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、まずラット横紋筋融解症後腎傷害モデルにおいて、腎特異的HO-1誘導剤である塩化スズが腎保護効果を持つ検討はおおむね終了した。現在は、塩化スズのHO-1誘導機序がHO-1誘導の制御系の一つヘム-Bach1系に関与するかどうかをラットモデルで検討中である。腎尿細管細胞(NRK-52E)に塩化スズを添加しHO-1誘導がヘム-Bach1系を介するかどうかをHO-1, Bach1の発現動態を調べin vitroで確認が予定より遅れており、2019年度は研究分担者を増員し、研究のスピードアップを図る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続き、塩化スズそのものHO-1誘導機序がHO-1誘導の制御系の一つヘム-Bach1系に関与するかどうかをラットモデルで検討する。さらに、腎尿細管細胞(NRK-52E)に塩化スズを添加しHO-1誘導がヘム-Bach1系を介するかどうかをHO-1, Bach1の発現動態を調べin vitroで確認する。 次に、塩化スズのHO-1誘導にはHO-1プロモーター領域のmetal response elementが関与することが予測されるが、詳細は不明である。そこでレポーターアッセイによりHO-1プロモーター領域のどの部位がHO-1誘導に関与するかin vitroで検討する。 HO-1誘導に関与するHO-1プロモーター領域を分割して組み込んだホタルルシフェラーゼレポーターベクターを、ラット腎尿細管細胞(NRK-52E)に遺伝子導入後、SnCl2を添加し培養する。ルシフェラーゼ発光強度を測定することで、HO-1プロモーターのどの部位にSnCl2が関与するか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、in vivoの実験は予定より順調に進んだため2018年度末に残額が発生した。一方、in vitroの実験がやや遅れており、その部分の助成金を2019年度分と併せて使用予定である。
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