研究課題/領域番号 |
18K08920
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
朱 鵬翔 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40380216)
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研究分担者 |
阪中 雅広 愛媛大学, 医学部, 研究員 (60170601)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 軽度外傷性脳損傷(MTBI) / 神経炎症 / ASC / 高次脳機能障害 |
研究実績の概要 |
一昨年(平成30年度)の研究でASCノックアウトにより軽度外傷性脳損傷(MTBI)後のマウス脳内炎症反応が抑えられ、高次脳機能障害が軽減されたことが証明された。昨年度(令和元年度)は引き続き軽度外傷性脳損傷(MTBI)モデルマウスを用いて、損傷後脳内の組織変化、特にグリア細胞の変化を調べた。マウスの頭部に一日一回、合計5回の落錘により損傷を与えた脳組織を麻酔下で取り出し、損傷部位の特定と活性化したグリア細胞の分布を調べるため、脳組織の連続切片を各種染色法で確かめた。その結果、軽度外傷性脳損傷モデルマウスにおいて、白質の損傷がMTBI後1週目から広範囲で認められ、MTBI後12週目でも脳内の複数の部位で確認できた。活性化したグリア細胞もMTBI後一週目からマウス脳内の広範囲で確認されたが、四週目でワイルドタイプ(WT)マウスに比べてASCノックアウトマウスの脳内で活性化グリア細胞の減少傾向が見られた。12週目で、WTマウスに比べてASCノックアウトマウス脳内の活性化グリア細胞が有意に減少した。MTBI後24週目にマウス脳内のPhospho-tauの発現をウエスタンブロッティングで確認した結果、偽手術マウスに比べて、MTBIモデルマウスの脳内Phospho-tauの発現が増加したが、ASCノックアウトマウス脳内Phospho-tauの増加の程度がWTマウスより有意に低かった。 これらの結果から、MTBI後の高次脳機能障害が白質の損傷と神経炎症の拡大に関連していると考えられる。また、MTBI後のPhospho-tauの増加が神経炎症の抑制により減少したことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの研究で、軽度外傷性脳損傷モデルマウスを用いて、高次脳機能障害と脳内炎症因子や活性化したグリア細胞の関連性を調べた。昨年度の目標は、グリア細胞特にアストロサイトの活性化が神経細胞体と軸索へ与える影響を調べる事であった。MTBIを受けた脳組織を連続切片で解析した結果、広範囲の白質の変性とグリア細胞の活性化が確認できた。ASCの有無による脳内活性化したグリア細胞の変化も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、去年に引き続き、アストロサイトなどのグリア細胞の活性化が神経組織そして脳機能に及ぼす変化を調べることを目標とする。MTBI後の脳内で活性化したアストロサイトが広範囲に分布することが確認されたが、二光子励起顕微鏡で特定部位のアストロサイトを観察するのは困難と考えている。電子顕微鏡でMTBI後神経組織の変化を解明して、神経炎症が脳機能へ及ぼす影響を推測する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由: MTBI後の症状を再現するために、MTBIモデルマウスを長期飼育した。飼育期間内では動物餌代と動物施設使用料以外の消耗品出費がない状況が続いた。また免疫染色の結果により、予定していた二光子励起顕微鏡の使用が不要になり、その使用料が発生しなかった。これらの事情により、次年度使用分が生じた。 次年度使用額と当該年度以降分として請求した助成金を合わせた金額の使用計画:今年度は電子顕微鏡を用いて、MTBI後の神経組織の変化を探る予定である。実験用の試薬、抗体などの消耗品購入と大型装置使用料、また論文発表などに助成金を使用する予定である。
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