研究課題/領域番号 |
18K08925
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
殿岡 恵子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (20521884)
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研究分担者 |
篠塚 逹雄 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (70095610)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LC/MS/MS / Solidphase extrraction / Analysis / β-blocker / Intoxication / Acute drug intoxication |
研究実績の概要 |
研究の目的:法医中毒分野や救急領域などの臨床分野において、急性薬物中毒の原因薬物を究明することは治療法の選択や治療方針を決定する上で重要となり、迅速簡便な薬毒物の分析法の確立が必要である。現代の高齢化社会において、高齢者は、内服薬の種類が多いことや自己管理の困難さから、定期処方の薬剤でも薬物中毒を引き起こしえる。その原因として、基礎疾患の多様性から処方薬が増え、定期内服薬自体に相互作用を起こす危険性や、薬物代謝の加齢変化などがある。高齢者の基礎疾患関連の薬剤、特に事故的要素による薬物中毒で、より重篤な症状を呈し死亡の原因とされるのは、循環器系薬剤(β遮断薬やCa拮抗薬)である。本研究では、種々のβ遮断薬に着目し、生体内試料からのβ遮断薬やその代謝物の LC/MS/MS による一斉分析法の開発を目的とした。研究計画は、固相抽出用カラムを用いた血清、尿試料からの種々のβ遮断薬および代謝物の最適抽出条件を検討し、生体試料から抽出分離したβ遮断薬および代謝物のLC/MS/MSによる一斉分離分析条件を確立することである。さらに開発した本分析法を救急分析試料へ適用し、β遮断薬のスクリーニング法として本法の有用性に関して検討することである。平成30年度:①9種類のβ遮断薬を使用した。抽出効率および精度管理に関して、HPLC 分析において検討した。これにより、β遮断薬の LC/MS/MS 分析のための一斉分離分析条件(分析カラムの選択、移動相)についても同時に検討した。②血清に、種々のβ遮断薬を添加し、固相抽出用カラム(Oasis; PRiME HLB カラム)を使用し、抽出溶媒(溶媒の種類、濃度、pH)、洗浄溶媒(溶媒の種類、濃度、pH、回数)等を検討し、β遮断薬の最適抽出条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9種類(アテノロール、カルテオロール、ピンドロール、チモロール、アセブトロール、アロチノロール、メトプロロール、プロプラノロール、ベタキソロール)β遮断薬のHPLC分析、LC/MS/MS分析において、一斉分離分析条件(分析カラムの選択、移動相)を確立した。β遮断薬の中には、構造式が類似しているものが多く、今回使用した9種β遮断薬でのHPLC分析では、保持時間が近似となる薬物がみられた。 固相抽出用カラム(Oasis; PRiME HLB カラム)を用いた、血清からの9種β遮断薬の最適抽出条件を検討した結果、HPLC分析、LC/MS/MS分析ともに良好であった。また、血清中9種β遮断薬の PRiME HLBカラム抽出法は再現性もあり、この方法を用いての HPLC分析、LC/MS/MS分析における定量検出も可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、尿試料からのβ遮断薬の分析を行うにあたり、組み換え遺伝子チトクロームP450を用いて in vitro 条件下でのβ遮断薬の代謝物生成実験を行う。代謝物の同定はHPLCやLC/MS/MSで行う。また、心不全治療薬のカルベジロールや妊娠高血圧症治療薬のラベタロールなど臨床的に多く使用されているβ遮断薬を新規に数種類追加し、同様に抽出効率および精度管理に関して、HPLC 分析において検討し、これにより、β遮断薬の LC/MS/MS 分析のための一斉分離分析条件についても同時に検討する。さらに、新規に数種類追加するβ遮断薬も含め、固相抽出用カラムを用いた血清、尿試料からのβ遮断薬および代謝物の最適抽出条件を再検討し、生体試料から抽出分離したβ遮断薬および代謝物のLC/MS/MSによる一斉分離分析条件を確立する。新規に開発した本分析法を、救急分析試料へ適用し、β遮断薬のスクリーニング法として本法の有用性について検討する。改善点が必要な場合はさらに再検討し、新規に開発した本分析法の有用性を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、HPLC、LC/MS/MS関連消耗品、一般試薬などこれまでに購入済みの試薬を用いたことで、必要最小限度の経費で済み未使用額が生じた。また、国際的学術雑誌への投稿論文を次年度に行う予定のため、未使用額はその経費に充てることとする。さらに、次年度行う代謝物生成実験に使用する代謝酵素は、一般試薬に比べ高額なため、代謝酵素の購入に未使用額も充てることとする。
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