国内外において、体外循環法は循環器疾患のみならず重症呼吸器疾患まで適応を拡大しており、症例は急増している。特に近年、静脈から脱血を行い、人工肺にて酸素化したのち、再び静脈に送血する形式のV-V ECMO (が各種人工呼吸療法などで改善が見込め ない重症呼吸器疾患に適応され注目を浴びている。しかし、この V-V ECMOは比較的新しい手技であり、臨床および基礎研究は世界的に見ても極めて少ない。このような背景のもと、小動物を用い呼吸器疾患モデルにV-V ECMOを導入し評価することで、回復機序を解明し、重症呼吸器疾患に対する適切な補助循環による治療法を提案することを目的に取り組んできた。 本研究では、各年度ごとに課題を設けており、これまではラットV-V ECMOモデルおよび再現性のある呼吸器疾患モデルの確立し、さらに作製した呼吸疾患モデルに、実際にV-V ECMOを導入し治療中の病態変化を観察すること目的として取り組んできた。今年度は研究期間を延長し、実験を継続しデータを増やしていくことができた。成果として、人工呼吸器による陽圧強制換気により、形態学的に傷害を受けることが確認できており、Rest Lungの観点からも積極的な呼吸補助ECMOの導入を示唆するものであると考えている。また、ARDSモデルにECMOを導入することで、血液ガスデータの改善が確認できた。血液評価だけではなく、肺を中心とした病理評価やリアルタイムPCRによる評価を行い、V-V ECMOの有効性および臓器局所に及ぼす影響を詳細に検討することができた。一方で、週単位の長期補助を行うV-V ECMOであるが、本研究は小動物モデルの特性上、数時間の検討にとどまり、当初目標にしていた重症呼吸器疾患の完全な回復まで観察できなかった。今後、今以上に実臨床に即した長期補助モデル構築に取り組みたいと考えている。
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