研究課題
急性期脳主幹動脈閉塞に対する、ステントリトリーバー等の新規デバイスを用いた血栓回収療法は有効性が証明され、標準治療の地位を確立するに至った。一方で、合併症として、アルテプラーゼ静注療法等の内科治療ではみられなかった、くも膜下出血に代表される「機械的侵襲に伴う頭蓋内出血」が認められるようになった。血管内治療後くも膜下出血は、予測因子や臨床転帰への影響は明確になっておらず、また、末梢血管閉塞では血管の分岐・屈曲によりステントリトリーバーの円滑な牽引ができず合併症リスクが高まると懸念されているが、安全性の高い治療手技は確立されていない。本年度は、血管内治療後のくも膜下出血の発症・増悪の臨床的・解剖学的予測因子を明らかにするために、血栓回収療法の多施設共同観察研究(茨城県の血栓回収療法を行う15施設を対象としたRICOVERYレジストリ、筑波大学および関連計5施設のNEMMOPHILAレジストリ)を構築した。500例超が登録されたRICOVERYレジストリからは、再開通率86%, 転帰良好例34%、死亡が14.1%ですべての頭蓋内出血発症率は30%、転帰悪化につながる脳実質内血腫発症率は2.3%であった等の、現時点での血栓回収療法の診療実態を明らかにすることができ、NEMMOPHILAレジストリからは、入院時高血糖が術後の頭蓋内出血を予測する、等の知見が明らかとなった。得られた成果は学会および総説(著書分担執筆)で発表した。本研究は、急性期脳梗塞に対する血管内治療の安全な治療手技確立に資する研究である。
3: やや遅れている
本研究の検討対象となる多数例のレジストリを構築し、研究成果を複数報告することができたが、血栓回収療法後くも膜下出血の臨床的・画像的予測因子の解析が途上である。
RICOVERYレジストリ、NEMMOPHILAレジストリの登録症例における血管内治療後の臨床的予測因子について解析を進めると同時に、血管内治療時の画像情報をDVD-Rを用いて集積し、解剖学的予測因子についての解析の準備を進める。
血栓回収療法後くも膜下出血の臨床的・画像的予測因子解析において、特に画像データベース構築(登録症例の術中画像をDVD-Rにて多施設観察研究参加施設から収集)が遅れたことから研究の進展がやや遅れ、学会発表の水準に達せず、出張旅費およびDVD-R等研究に必要な諸経費が当初の見込みより低額であったことが挙げられる。
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