研究課題
急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法は有効性が証明されている一方で、合併症としてくも膜下出血等の「機械的侵襲に伴う頭蓋内出血」が認められる。血管内治療後くも膜下出血は、予測因子や臨床転帰への影響は明確になっておらず、また、末梢血管閉塞では血管の分岐・屈曲によりステントリトリーバーの円滑な牽引ができず合併症リスクが高まると懸念されているが、安全性の高い治療手技は確立されていない。本年度は、昨年度に引き続き、血栓回収療法の多施設共同観察研究(茨城県の血栓回収療法を行う15施設を対象としたRICOVERYレジストリおよび筑波大学および関連計5施設のNEMMOPHILAレジストリ)を継続した。RICOVERYレジストリ(500例超)からは、病院間転送例は血栓回収療法可能施設への直接搬送例に比し転帰良好例が少ない(23.5% vs 42.9%, aOR 0.34)が、血管内治療医の出張支援による治療は病院間転送に比し転帰良好が増加(51.6%, aOR 4.41)することが明らかとなった。得られた成果は学会および総説で発表した。本研究は、急性期脳梗塞に対する血管内治療の安全な治療手技確立に資するのみならず、地域医療体制の確立にも貢献する研究である。
3: やや遅れている
多数例を登録したレジストリを継続し、研究成果を複数報告しているが、血栓回収療法後くも膜下出血の臨床的・画像的予測因子の解析が途上である。
RICOVERYおよびNEMMOPHILAレジストリを継続し、更なる知見の集積を図る。当院に昨年導入した新規の全自動灌流画像解析ソフトRAPIDが導入されたことから、血管内治療時の画像情報を集積し、解剖学的予測因子についての解析準備を進めると同時に、同ソフトを用いて出血性合併症を予測する画像所見についての解析も行うことを予定する。
血栓回収療法後くも膜下出血の臨床的・画像的予測因子解析において、特に画像データベース構築が遅れており、出張旅費およびDVD-R等研究に必要な諸経費が当初の見込みより低額であったことが挙げられる。本年度は上記データベース構築および解析等を行っていく予定である。
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