研究実績の概要 |
急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法は、転帰改善効果が証明されているが、くも膜下出血などの機械的侵襲に伴う頭蓋内出血が生じ得る手技である。血栓回収療法後くも膜下出血の予測因子や臨床転帰への影響、くも膜下出血を回避可能な治療手技は明らかではない。本研究では、茨城県の血栓回収療法施行施設が参加するRICOVERYレジストリ―より、血栓回収療法の実態、くも膜下出血を含む合併症の予測因子・臨床的意義を探索している。本年度は、コロナ禍における急性期血管内再開通療法の実態を、頭蓋内出血の増減を含め検討した。14施設より集積された2018~2019年の456例(COVID前期)と2020年の250例(COVID期)を比較したところ、COVID期において来院-穿刺時間は遅延し(中央値82.5分 vs 70分, p<0.001)ていたが、有効再開通率に差はなく(80.8% vs 85.5%, p=0.109)、症候性頭蓋内出血が増加することはなかった(6.0% vs 7.2%, p=0.532)。退院時自立(転帰良好)率はCOVID期で良好(32.4% vs 25.3%, p=0.043)であった。多変量解析では、転帰良好には病前ADL、神経学的重症度、梗塞巣範囲、有効再開通、症候性頭蓋内出血が関連したが、COVID期とは関連しなかった(調整オッズ比 1.466, 95%信頼区間 0.906-2.372)。茨城県では、COVID-19流行期(2020年)においても血管内再開通療法後の機能転帰は、治療開始は遅延したものの維持され、頭蓋内出血が増加することはなかったことを明らかにした。成果は学会等で発表した。本研究は、血栓回収療法の安全な治療手技確立に資するのみならず、地域医療体制の確立にも貢献する研究である。
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