研究課題/領域番号 |
18K08938
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金 太一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90447392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | PC-MRA / 流体解析 / TOF-MRA / 正規化相互情報量法 / 脳血管 |
研究実績の概要 |
a) 疾患データへの適用 脳動脈瘤10症例を対象とした。提案手法によるベクトルデータとスカラーデータとを融合させた流体解析にて動脈瘤ブレブ内の流速、動脈瘤壁のせん断ずり応力などのパラメータを算出した。その結果、ブレブ内への流速比と動脈瘤壁の硬さとの関連性が示唆された。これによって手術前の画像検査のみでブレブの壁の薄さの指標を得ることができ、術前検討に寄与した。本研究結果は令和2年度に論文投稿予定である。 b) 他の医用画像とのレジストレーション法の開発および臨床応用 PC-MRAと、3次元脳血管撮影およびCT画像とのレジストレーション法を開発し、脳動静脈奇形を対象に後方視的に調査した。破裂例におけるNidusの平均血流量は570 ml/s、Drainerの平均総血流量は338 ml/s、平均のNidus/Drainer流量比は1.70であった。一方、未破裂例におけるNidusの平均血流量は552 ml/s、Drainerの平均総血流量は501 ml/s、平均のNidus/Drainer流量比は1.10であった。以上よりNidus/Drainer流量比は破裂脳動静脈奇形で高い傾向にあり、Nidus/Drainer流量比の高値は破裂の危険因子となる可能性が考えられた。本研究に関しては更に症例数を増やして令和2年度中に論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は計画の下方修正はなく、計画書に記載された内容はほぼ全て遂行した。研究結果に関しても、計画時の予想と概ね合致していた。学会発表は5回であり、最終年度となる令和2年度には少なくとも2編の論文投稿が予定されており、学術的にも充分な達成度であった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度も計画通りに研究をすすめる。すなわち、提案手法を用いた4DCGの臨床的有用性の評価を中心に研究をすすめる。動脈瘤症例に加えて、脳動静脈奇形20例を対象に提案手法の臨床的有用性を評価する。提案手法によって流入動脈および流出静脈の血流情報(方向、量、速度)が得られるので、これによる手術検討を行い、その有用性を評価する。手術所見を真とする。また血管内塞栓術前後の脳動静脈奇形のナイダスの血流変化を提案手法を用いて測定し、塞栓術前後の血行動態変化を定量的に可視化する。特に塞栓術後の出血のリスクに関して有益な情報が得られないかに着目する。また、脳腫瘍に関しても提案手法の臨床的有用性を評価する。対象は血管芽細胞腫10例とする。栄養動脈、流出静脈、正常血管に関する血流情報に基づく手術検討を実施する。上記2疾患に対しては、血流情報によって手術検討や手術遂行の精度が向上するのかを評価する。特にこれまでの技術では不可能であった、血流量を重視した手術検討の有用性を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用しているソフトウェアの年間保守料の支払い時期が次年度となったため。2020年6月に予定通り執行予定。
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